注文者の指定場所に建物を建築すべき請負契約において、注文者が建築確認を受け得るかどうかは、右事情が当事者間で特に契約の内容とされないかぎり、契約の要素と解すべきではない。
建築確認の許否は建物建築請負契約の要素か。
民法95条,建築基準法6条
判旨
建築確認を受けずに建築された建物を目的とする請負契約も当然に無効とはならず、また、建築確認の可否は原則として単なる動機の錯誤にすぎない。
問題の所在(論点)
1. 建築基準法所定の建築確認を受けずに建築する建物を目的とする請負契約は、公序良俗等により無効となるか。 2. 建築確認を受け得ることが契約の内容となっていない場合、建築確認の成否は「要素の錯誤」にあたるか。
規範
1. 建築基準法上の建築確認を受けないまま行われる建築請負契約であっても、同法の制裁を受ける可能性があることは格別、公序良俗等により私法上の契約が当然に無効となるものではない。 2. 契約において建築確認を受けられるか否かは、特段の事情がない限り単なる「動機の錯誤」にすぎず、それが特に契約の内容とされた場合に限り要素の錯誤(現行法上の錯誤取消し・無効事由)となり得る。
重要事実
請負人(被上告人)と注文人(上告人)との間で建物建築請負契約が締結された。その後、上告人が当初の建築場所を変更したい旨申し入れたが、新たな建築場所を指定しなかった。被上告人は場所の指定を催告したが履行されなかったため、契約を解除し、解除時までに準備した素材の切込作業等の損害賠償を求めた。これに対し上告人は、建築確認が得られない建物であるから契約は無効である、または要素の錯誤がある等と主張して争った。
あてはめ
1. 建築基準法6条1項違反の建築であっても、行政上の制裁は免れないが、私法上の請負契約の効力を一律に否定すべき法的根拠はない。 2. 本件契約において建築確認が得られるか否かは単なる契約の動機に留まる。事実関係に照らし、建築確認を得られることを特に契約の内容とした趣旨は認められないため、要素の錯誤にはあたらない。 3. 注文人が新たな建築場所を指定しないことは債務不履行を構成し、請負人による解除および損害賠償請求は正当である。
結論
建築確認の不備を理由とする契約無効や錯誤の主張は認められず、注文人の建築場所指定義務違反に基づく契約解除および損害賠償請求が認められる。
実務上の射程
建築基準法等の取締法規違反が直ちに契約の私法上の効力(公序良俗違反による無効)に直結しないことを示す射程を持つ。また、建築確認の可否を錯誤の理由とするには、単なる前提知識ではなく「明示的または黙示的に契約の内容とされていること」が必要であるという実務上の立証指針となる。
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