大麻取締法に関する違憲(憲法一四条、三一条、三六条)の主張が前提を欠くとされた事例
憲法14条,憲法31条,憲法36条,大麻法24条の2
判旨
大麻取締法が定める法定刑は、違反行為の罪質に対して著しく均衡を欠くものとは認められず、憲法31条、36条に違反しない。また、大麻が酒やたばこより無害であることを前提とする憲法14条違反の主張は、前提となる事実関係を欠く。
問題の所在(論点)
大麻取締法に定める法定刑が、犯罪の罪質に対して著しく均衡を欠き、憲法31条、36条に違反するか。また、酒やたばこ等の他の嗜好品との規制の差異が憲法14条1項に違反するか。
規範
刑罰の内容及び程度は、立法府が犯罪の性質、社会状況、公共の福祉への適合性等を考慮して決定すべき立法裁量に属する。もっとも、その刑罰が犯罪の罪質及び責任に比して著しく不均衡であり、正当な目的を達成するために必要な程度を明らかに超えている場合には、憲法31条(適正手続・残虐な刑罰の禁止の趣旨を含む)や36条に違反し得る。また、規制の有無や程度の差異が合理的な根拠を欠く場合には、憲法14条1項の法の下の平等に抵触する。
重要事実
被告人は、大麻取締法違反の罪で起訴され、有罪判決を受けた。これに対し被告人側は、同法が定める刑罰が重すぎること(憲法31条、36条違反)や、大麻は酒やたばこよりも無害であるにもかかわらず厳格に規制されていることは不当な差別であること(憲法14条違反)等を理由として、同法の違憲性を主張し上告した。
あてはめ
憲法31条及び36条違反の点について、大麻取締法に定められた刑罰を検討するに、大麻の社会的弊害や国民の健康保護という目的を考慮すれば、当該法定刑が違反行為の罪質に対して著しく不均衡であるとは認められない。次に、憲法14条違反の点について、弁護人は「大麻は酒やたばこよりも無害である」との事実を主張するが、これは原判決が認定した事実関係に反するものであり、合理的な根拠に基づく差別であるとの原審の判断を覆すに足りる事情は認められない。したがって、立法裁量の範囲内にあると解される。
結論
大麻取締法の規定は、憲法14条、31条、36条のいずれにも違反しない。
実務上の射程
刑事立法における広範な立法裁量を認める判例として位置づけられる。答案上、薬物規制等の法定刑の合憲性を論じる際、著しい不均衡がない限り立法府の判断を尊重すべきとする基準(裁量論)の具体例として活用できる。特に14条違反の主張については、規制対象の有害性に関する専門技術的な事実認定が重要となることを示唆している。
事件番号: 昭和57(あ)631 / 裁判年月日: 昭和58年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻取締法が定める法定刑は、違反行為の罪質に対して著しく均衡を欠くものとは認められず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は大麻取締法24条2号(輸出入等)および同法24条の2第1号(所持等)の罪に問われた。これに対し、弁護人は同法が定める刑罰が重すぎて違反行為の罪質と均衡を欠いてお…
事件番号: 昭和60(あ)445 / 裁判年月日: 昭和60年9月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻の有害性は否定できず、大麻取締法による規制は憲法13条、14条、31条、36条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は大麻を所持したことにより大麻取締法違反で起訴された。これに対し弁護人は、大麻には有害性がない、あるいは極めて低いものであるから、その所持を処罰することは憲法13条(自己決定権…