大麻取締法違反事件に関する違憲(一三条、一四条、三一条違反)の主張が欠前提とされた事例
憲法13条,憲法14条,憲法31条
判旨
大麻取締法による大麻の所持等の禁止は、大麻の有害性及び法益侵害の危険性に関する事実に照らし、憲法13条、14条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
大麻取締法が大麻を規制することが、憲法13条(幸福追求権・自己決定権)、31条(適正手続・刑罰の適正)、14条(法の下の平等)に違反し、違憲といえるか。
規範
立法目的が正当であり、その目的を達成するための手段として規制が合理的かつ必要最小限度のものであるならば、当該規制は憲法13条、14条、31条に違反しない。薬物規制については、当該薬物の人体に対する有害性や公共の福祉への影響を考慮して、立法府の裁量的判断を尊重すべきである。
重要事実
上告人は、大麻取締法違反(所持等)に問われた事案において、大麻は人体に有害ではなく法益侵害の危険性もないこと、また酒やたばこの方が害が大きいことなどを理由に、同法による規制は自己決定権(憲法13条)、適正手続(31条)、平等権(14条)に反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
原判決の認定によれば、大麻は人体に有害なものであり、法益侵害の危険性が認められる。上告人は酒やたばこの害の方が大きいと主張するが、これは独自の事実前提に立つものである。大麻の有害性が認められる以上、社会全体の保健衛生上の危害を防止するという目的は正当であり、所持等を一律に禁止する規制手段も合理的な範囲内にあると解される。したがって、他の嗜好品との比較において差異があるとしても、直ちに不合理な差別や過度な制限とはいえない。
結論
大麻取締法による規制は、憲法13条、14条、31条のいずれにも違反しない。
実務上の射程
薬物規制の違憲性が争われる際のリーディングケースの一つ。立法府に一定の裁量を認めつつ、薬物の有害性を前提とした規制の合理性を肯定する枠組みを示す。答案上は、パターナリスティックな制約の正当化や、13条・31条の合憲性判定基準を論じる際の論拠として利用可能である。
事件番号: 平成5(あ)913 / 裁判年月日: 平成6年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻取締法による規制は、大麻の心身に対する有害性が認められる以上、憲法の保障する基本的人権を侵害するものではなく、合憲である。また、暴力団員であることを量刑上の考慮要素としても、直ちに不合理な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は大麻取締法違反等の罪に問われた。弁護側は、大麻は心身に無害…
事件番号: 昭和60(あ)445 / 裁判年月日: 昭和60年9月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻の有害性は否定できず、大麻取締法による規制は憲法13条、14条、31条、36条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は大麻を所持したことにより大麻取締法違反で起訴された。これに対し弁護人は、大麻には有害性がない、あるいは極めて低いものであるから、その所持を処罰することは憲法13条(自己決定権…
事件番号: 昭和57(あ)631 / 裁判年月日: 昭和58年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻取締法が定める法定刑は、違反行為の罪質に対して著しく均衡を欠くものとは認められず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は大麻取締法24条2号(輸出入等)および同法24条の2第1号(所持等)の罪に問われた。これに対し、弁護人は同法が定める刑罰が重すぎて違反行為の罪質と均衡を欠いてお…