大麻取締法違反の規定違憲の主張が前提を欠くとされた事例
大麻取締法24条の2第1項1号,大麻取締法24条の3号1項,憲法11条,憲法12条,憲法13条,憲法14条,憲法19条
判旨
大麻取締法による規制は、大麻の心身に対する有害性が認められる以上、憲法の保障する基本的人権を侵害するものではなく、合憲である。また、暴力団員であることを量刑上の考慮要素としても、直ちに不合理な差別には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 大麻取締法による大麻の所持等の規制は、憲法13条や19条が保障する基本的人権を侵害し違憲か。 2. 被告人が暴力団員であることを量刑上の考慮要素とすることは、憲法14条や31条に違反するか。
規範
1. 憲法11条、12条、13条、19条との関係では、対象物の心身に対する有害性が認められる場合には、その所持・使用等を禁止する規制は公共の福祉に基づく合理的な制限として合憲となる。 2. 憲法14条、31条との関係では、被告人の属性(暴力団員であること等)のみをもって直ちに不利益な差別的処遇を行うことは許されないが、犯情や情状に関する評価として当該属性を考慮することは直ちに違憲とはならない。
重要事実
被告人は大麻取締法違反等の罪に問われた。弁護側は、大麻は心身に無害であり、その規制は幸福追求権(13条)や思想・良心の自由(19条)に反すると主張した。また、被告人が暴力団組員であることを理由に量刑上不利な差別を受けたことは、法の下の平等(14条)および適正手続(31条)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 大麻の有害性について、原審が認定した「大麻は人の心身に有害である」という判断は相当である。したがって、これを規制することは基本的人権の不当な侵害にはあたらず、合憲である。 2. 量刑について、原判決は被告人が暴力団員である事実を考慮しているが、それをもって直ちに不当な差別的処遇をしたとは認められない。属性そのものを理由とした差別ではなく、刑事責任の重さを判断する上での考慮は許容される。
結論
本件上告を棄却する。大麻取締法は合憲であり、暴力団員であることを考慮した量刑判断も憲法に違反しない。
実務上の射程
大麻取締法の合憲性については、本決定により「有害性」を根拠に再確認された。実務上、薬物規制の合憲性が争われる際の確立した先例として機能する。また、暴力団属性の量刑判断については、属性そのものによる差別(身分差別)ではなく、犯情の一部として評価される限りは14条違反の問題を生じないという限界を示している。
事件番号: 昭和53(あ)2318 / 裁判年月日: 昭和54年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻取締法による大麻の所持等の禁止は、大麻の有害性及び法益侵害の危険性に関する事実に照らし、憲法13条、14条、31条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、大麻取締法違反(所持等)に問われた事案において、大麻は人体に有害ではなく法益侵害の危険性もないこと、また酒やたばこの方が害が大きいことな…
事件番号: 昭和60(あ)445 / 裁判年月日: 昭和60年9月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大麻の有害性は否定できず、大麻取締法による規制は憲法13条、14条、31条、36条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は大麻を所持したことにより大麻取締法違反で起訴された。これに対し弁護人は、大麻には有害性がない、あるいは極めて低いものであるから、その所持を処罰することは憲法13条(自己決定権…