交通反則金既納付を看過してなされた略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法454条
判旨
交通反則金を納付した事実があるにもかかわらず公訴提起がなされた場合、道路交通法128条2項により公訴提起が許されないため、刑訴法338条4号に基づき公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
反則金の納付が完了している事案について公訴が提起された場合、裁判所はどのような措置を講じるべきか。道路交通法128条2項の効力と刑訴法338条4号の適用の可否が問題となる。
規範
道路交通法上の反則者が反則金を納付したときは、当該事案について公訴を提起することができず(同法128条2項)、これに反してなされた公訴提起は、「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、刑訴法338条4号により判決で公訴を棄却すべきである。略式手続においては、通常の手続に移した上で当該判決をすべきである。
重要事実
被告人は昭和46年3月14日、追越し禁止場所で自動車を追い越した道路交通法違反の事実につき、同年4月12日に反則金5,000円の通告を受け、納付期限内の同月22日にこれを納付した。しかし、検察官は同年6月7日に同一事実について公訴を提起し、室蘭簡易裁判所は同日、被告人を罰金5,000円に処する略式命令を発し、その後確定した。
あてはめ
本件において、被告人は公訴提起の約2ヶ月前には反則金の納付を完了している。道路交通法128条2項は、反則金納付後の公訴提起を明文で禁止しており、本件公訴はこの禁止規定に抵触する。したがって、当該公訴提起の手続は法令に違反して無効であり、刑訴法338条4号の公訴棄却事由に該当する。簡易裁判所がこれを見過ごして略式命令を発したことは法令違反であり、かつ被告人に二重の制裁を課す不利益を与えるものである。
事件番号: 平成1(さ)4 / 裁判年月日: 平成元年12月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告に基づき反則金を納付した事実があるにもかかわらず、手続上の不手際により公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴を提起することができないため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反(速度超過)の事実につき、起訴に先立ち交通反…
結論
反則金納付済みの事案に対する公訴提起は無効であり、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。本件略式命令は破棄され、公訴棄却の自判がなされる。
実務上の射程
交通反則通告制度における「反則金の納付」が、実質的な訴追障害(公訴提起の禁止)として機能することを明示した。答案上は、二重処罰の禁止や適正手続の観点から、形式的裁判(公訴棄却)を選択する根拠として活用する。また、略式命令に対する非常上告事由(法令違反および被告人の不利益)の具体例としても重要である。
事件番号: 平成1(さ)1 / 裁判年月日: 平成元年4月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を通告期限内に納付した場合には、道交法128条2項により公訴を提起することができず、これに反してなされた公訴提起は刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和63年1月14日、通行禁止道路を普通乗用自動車で通行した。同年2月24日…
事件番号: 昭和61(さ)2 / 裁判年月日: 昭和62年3月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実について反則金を納付したときは、同法128条2項により公訴を提起することができない。それにもかかわらず公訴提起がなされ、有罪の略式命令が確定した場合は、法令違反かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄・公訴棄却とされる。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(整備不…
事件番号: 昭和60(さ)3 / 裁判年月日: 昭和60年10月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を納付した者に対し、同一の事実について公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴提起は許されず、刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、原動機付自転車の運転免許不携帯の事実に関し、昭和59年5月8日に交通反則通告…
事件番号: 平成14(さ)3 / 裁判年月日: 平成15年4月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度に基づき反則金を納付した者に対しては、当該納付の対象となった行為について公訴を提起することができず、これに反した公訴提起は刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(駐車禁止場所での駐車)の事実について、少年時に家庭裁判所へ送致され…