交通反則金既納付を看過してなされた略式命令に対する非常上告
刑訴法458条1項
判旨
道路交通法違反の事実について反則金を納付したときは、同法128条2項により公訴を提起することができない。それにもかかわらず公訴提起がなされ、有罪の略式命令が確定した場合は、法令違反かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄・公訴棄却とされる。
問題の所在(論点)
交通反則告知に基づく反則金の納付がなされた後になされた公訴提起の有効性、および有罪の略式命令が確定してしまった場合の救済手続。
規範
道路交通法上の反則行為に該当する事実について、同法に基づき反則金が納付された場合、同法128条2項の規定により、当該事実について公訴を提起することは法律上許されない。これに反してなされた公訴提起は、刑事訴訟法338条4号の「公訴の提起がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、判決で公訴を棄却すべきである。
重要事実
被告人は道路交通法違反(整備不良車両の運転)の事実に関し、昭和60年10月18日に交通反則通告書を受け、納付期限内の同月28日に反則金5,000円を納付した。しかし、検察官は同一の事実について、翌年2月27日に公訴(略式命令の請求)を提起し、裁判所は同日、被告人を罰金5,000円に処する略式命令を発し、これが確定した。
あてはめ
被告人は既に反則金を適法に納付しており、道路交通法128条2項により公訴提起が禁止される状態にあった。それにもかかわらず、岩国簡易裁判所が有罪の略式命令を発したことは、刑事訴訟法463条1項に従い通常手続に移行させた上で同法338条4号により公訴棄却の判決をすべき義務に反する。したがって、当該略式命令は法令に違反し、被告人に不利益な裁判(二重の処罰的負担)であるといえる。
事件番号: 昭和60(さ)3 / 裁判年月日: 昭和60年10月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を納付した者に対し、同一の事実について公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴提起は許されず、刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、原動機付自転車の運転免許不携帯の事実に関し、昭和59年5月8日に交通反則通告…
結論
本件非常上告は理由がある。原略式命令を破棄し、刑事訴訟法338条4号により本件公訴を棄却する。
実務上の射程
交通反則金制度(青切符)の納付による公訴提起権の消滅という実体法上の効果を確認する事案である。答案上は、二重起訴や訴訟条件の欠如(刑訴法338条4号)を論じる際の具体的根拠として、道交法128条2項と併せて引用する。また、確定後の是正手段としての非常上告の対象となる「不利益な法令違反」の典型例としても活用できる。
事件番号: 平成1(さ)1 / 裁判年月日: 平成元年4月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を通告期限内に納付した場合には、道交法128条2項により公訴を提起することができず、これに反してなされた公訴提起は刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和63年1月14日、通行禁止道路を普通乗用自動車で通行した。同年2月24日…
事件番号: 平成1(さ)4 / 裁判年月日: 平成元年12月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告に基づき反則金を納付した事実があるにもかかわらず、手続上の不手際により公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴を提起することができないため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反(速度超過)の事実につき、起訴に先立ち交通反…
事件番号: 昭和60(さ)4 / 裁判年月日: 昭和61年5月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の「反則者」に該当する者に対し、交通反則告知・通告手続を経ることなく公訴を提起することは、公訴提起の手続が規定に違反し無効であるため、刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は指定最高速度を21キロメートル超過して運転し、道路交通法違反の事実で公訴…
事件番号: 昭和58(さ)2 / 裁判年月日: 昭和58年11月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反するため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路標識による最高速度を14キロメートル超過して走行した。この行為は道交法125条1項の「反…