法定刑超過の原判決を破棄した事例(非常上告事件)
刑訴法458条,刑法256条
判旨
確定した判決において科された罰金刑が法定刑の上限を超えている場合、当該判決は違法であり、被告人の不利益になるため破棄を免れない。法令に基づき、適正な法定刑の範囲内で改めて刑を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
確定判決において科された罰金刑が、実体法上の法定刑の上限を超えていた場合の効力およびその是正の可否が問題となる。
規範
刑罰を科すに際しては、罪刑法定主義の原則に基づき、各犯罪事実に該当する条文が定める法定刑の範囲内で行わなければならない。確定判決であっても、法定刑の上限を超える刑を科したものは法令に違反する違法な判決となる。
重要事実
被告人は賍物牙保罪(当時の刑法256条2項)により、懲役1年および罰金10万円、懲役刑については3年間の執行猶予という判決を受け、当該判決は確定した。しかし、当時の賍物牙保罪の法定刑は10年以下の懲役「および5万円以下の罰金」であり、確定判決における罰金額は法定刑の上限を超えていた。
あてはめ
被告人の所為に適用されるべき刑法256条2項および罰金等臨時措置法によれば、罰金刑の上限は5万円である。原判決が科した10万円の罰金は、明らかにこの法定刑の範囲を逸脱しており、法令の適用を誤った違法がある。この違法は被告人にとって不利益なものであるから、原判決を破棄した上で、適法な法定刑の範囲内で刑を再構成すべきである。
事件番号: 昭和48(さ)1 / 裁判年月日: 昭和48年4月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】売春防止法10条1項違反の罪に対し、同法が定める法定刑の多額を超える罰金刑を科した判決は、法令の適用に誤りがある違法なものとして破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、売春をさせることを内容とする契約を締結し、売春防止法10条1項違反の罪に問われた。第一審判決は、同条および同法15条を…
結論
原判決のうち被告人に関する部分を破棄する。被告人を懲役1年および罰金5万円に処し、懲役刑については3年間の執行猶予を付す。
実務上の射程
本件は非常上告等の手続を経た救済の事案と考えられるが、答案作成上の意義としては、罪刑法定主義の要請から「法定刑の範囲内での量刑」が絶対的な制約であることを示すものである。量刑の違法が被告人の不利益となる場合は、確定判決であっても是正の対象となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和46(さ)3 / 裁判年月日: 昭和46年12月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】建造物侵入罪の罰金刑の最高額が2,500円であるにもかかわらず、これを超過する5,000円の罰金に処した略式命令は、法令違反であり被告人の不利益になる。そのため、非常上告に基づき原命令を破棄し、適正な法定刑の範囲内で処断し直すのが相当である。 第1 事案の概要:被告人は、金員窃取の目的で歯科診療室…
事件番号: 昭和29(さ)2 / 裁判年月日: 昭和29年7月8日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項は、前に禁錮以上の刑に処せられその執行を猶予せられた者に対して一年を超える懲役若くは禁錮または罰金の言渡をなすときは、その執行を猶予することができない趣旨である。
事件番号: 昭和31(さ)2 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 破棄自判
函館地方裁判所は、昭和二九年一二月六日被告人に対する建造物侵入被告事件につき、被告人が昭和二九年五月二四日函館市所在函館公共職業安定所内事務室に侵入した犯罪事実を認定し、これに対し刑法一三〇条、罰金等臨時措置法二条、三条を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、被告人を罰金五千円に処する旨の判決を言い渡し、右判決は所論のとおり…
事件番号: 昭和56(さ)2 / 裁判年月日: 昭和56年4月30日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金法定刑の最高額が10万円であるにもかかわらず、これを超過して被告人を罰金20万円に処した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和54年10月16日、被害者に対し手拳で殴打する等の暴行を加え、加療約2週間…