函館地方裁判所は、昭和二九年一二月六日被告人に対する建造物侵入被告事件につき、被告人が昭和二九年五月二四日函館市所在函館公共職業安定所内事務室に侵入した犯罪事実を認定し、これに対し刑法一三〇条、罰金等臨時措置法二条、三条を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、被告人を罰金五千円に処する旨の判決を言い渡し、右判決は所論のとおりの経緯により昭和三一年三月七日確定したものであることが認められる。されば右判決が、右犯罪事実につき刑法一三〇条、罰金等臨時措置法二条、三条を適用し、所定刑中罰金刑を選択しながら、罰金五千円の言渡をしたことは、同罪につき科し得べき罰金刑の多額を超えて罰金刑を言渡した違法があるものであり、本件非常上告は理由がある。しかも右判決は被告人のため不利益であること勿論であるから、刑訴四五八条一号但書により、右判決を破棄し、被告事件につき更に判決すべきものである。
科し得べき罰金刑の多額を超えて罰金刑を言渡した判決の違法と非常上告
刑法130条,刑訴法454条,刑訴法458条1号,罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条
判旨
建造物侵入罪について罰金刑を選択する場合、適用される法令の定める罰金刑の多額を超えて罰金を科すことは法令違反であり、被告人に不利益な確定判決は非常上告により破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
建造物侵入罪について罰金刑を選択し適用する際、当時の罰金等臨時措置法等の規定に基づく法定刑の上限を超えて刑を言い渡した場合の効力、および非常上告の要否が問題となる。
規範
刑法130条前段の建造物侵入罪に対し、罰金等臨時措置法(当時)を適用して罰金刑を選択する場合、裁判所はその法定刑(罰金額の多額)の範囲内において刑を言い渡さなければならない。法定刑の範囲を超えた刑の言渡しは、法令の適用に誤りがある違法な判決にあたる。
重要事実
事件番号: 昭和28(さ)3 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】刑法130条前段の住居侵入罪に処する場合、当時の罰金等臨時措置法に基づき算出される罰金の法定限度額を超えて刑を科すことは、法令に違反し許されない。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀の上、工場の塀を乗り越えて工場敷地内に無断侵入した。第一審判決に対し、原審(控訴審)は科刑が軽すぎるとして自ら判…
被告人は、函館公共職業安定所内の事務室に不法に侵入したとして、建造物侵入被告事件により起訴された。第一審(函館地裁)は、被告人に対して刑法130条、罰金等臨時措置法2条・3条を適用し、所定刑の中から罰金刑を選択した。しかし、同裁判所は当時の法定刑の多額を超える「罰金5000円」を言い渡した。この判決はそのまま確定したが、検事総長が法令適用の違法(法定刑の上限超過)を理由に非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件において適用される刑法130条および当時の罰金等臨時措置法の規定を照らし合わせると、言い渡された「罰金5000円」は、同罪につき科し得るべき罰金刑の多額を超えている。したがって、第一審判決には法令の適用に誤りがあり、かつ法定刑より重い刑を科していることから「被告人のため不利益であること」が明白である。よって、刑事訴訟法458条1号但書に従い、原判決を破棄して自ら判決を言い直すべきである。
結論
原判決を破棄する。被告人を罰金2500円(適正な法定刑の範囲内)に処し、完納不能時の労役場留置を命ずる。
実務上の射程
裁判所が法定刑の範囲を誤って重い刑を言い渡した場合、判決確定後であっても非常上告(刑訴法454条以下)の対象となる。実務上、罰金刑の額面や労役場留置の換算等の形式的な誤りは、被告人の不利益となる場合に「判決の破棄・自判」という救済手段が必要になることを示す典型例である。
事件番号: 昭和32(さ)7 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令において、法定刑の上限を超える罰金額を科したことは法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告に基づき当該略式命令を破棄し自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入罪により罰金3,000円に処する旨の略式命令を受け、これが確定した。しかし、当時の住居侵入罪(刑法…
事件番号: 昭和36(さ)1 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の最高額を超過する罰金を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかであるため、非常上告に基づき当該命令を破棄し、適正な刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により、簡易裁判所の略式命令にて罰金3,000円(不完納時労役場留置1日2…
事件番号: 昭和32(さ)4 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、刑法130条及び罰金等臨時措置法所定の罰金刑の最高額を超える金額を科した判決は法令に違反する。そのため、非常上告に基づき原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内で自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により略式命令を受け、罰金3,000円を科された。しかし、当時…