判旨
刑法130条前段の住居侵入罪に処する場合、当時の罰金等臨時措置法に基づき算出される罰金の法定限度額を超えて刑を科すことは、法令に違反し許されない。
問題の所在(論点)
原審が言い渡した罰金1万円という刑罰が、当時の罰金等臨時措置法の規定に照らし、法律の定める上限を超えた違法な審判にあたるか。
規範
刑法130条の住居侵入罪に対して罰金刑を選択する場合、罰金等臨時措置法(当時)の規定により算出される多額(上限額)を超える金額を言い渡すことは、法律に規定のない刑を科すものとして、法令違反となる。
重要事実
被告人は共犯者と共謀の上、工場の塀を乗り越えて工場敷地内に無断侵入した。第一審判決に対し、原審(控訴審)は科刑が軽すぎるとして自ら判決を言い渡し、被告人を罰金1万円に処した。しかし、当時の罰金等臨時措置法3条等の規定によれば、住居侵入罪の罰金の上限額は2,500円であった。
あてはめ
本件における住居侵入罪の罰金の法定上限は、罰金等臨時措置法3条によれば2,500円である。これに対し、原審が被告人に科した罰金1万円は、明らかにこの法定上限を超えている。したがって、原判決は法律に規定のない額の罰金を言い渡したものであり、審判が法令に違反しているといえる。
結論
原判決を破棄する。法定刑の範囲内である罰金2,000円に処するのが相当である。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、法定刑の範囲を超えた判決が非常上告の対象となることを示す事例。実務上は、特別法による罰金額の引き上げ等の修正を見落とした場合の是正手続として機能する。
事件番号: 昭和32(さ)4 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、刑法130条及び罰金等臨時措置法所定の罰金刑の最高額を超える金額を科した判決は法令に違反する。そのため、非常上告に基づき原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内で自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により略式命令を受け、罰金3,000円を科された。しかし、当時…
事件番号: 昭和23(そ)3 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 破棄自判
昭和二三年法律第二五一号罰金等臨時措置法施行(昭和二四年二月一日)前の刑法第一三〇条の罪に対し罰金五〇〇円の刑を言い渡した確定判決に対し非常上告があつたときは、旧刑訴第五二〇条第一号但書の場合に該当する。
事件番号: 昭和31(さ)2 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 破棄自判
函館地方裁判所は、昭和二九年一二月六日被告人に対する建造物侵入被告事件につき、被告人が昭和二九年五月二四日函館市所在函館公共職業安定所内事務室に侵入した犯罪事実を認定し、これに対し刑法一三〇条、罰金等臨時措置法二条、三条を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、被告人を罰金五千円に処する旨の判決を言い渡し、右判決は所論のとおり…