昭和二三年法律第二五一号罰金等臨時措置法施行(昭和二四年二月一日)前の刑法第一三〇条の罪に対し罰金五〇〇円の刑を言い渡した確定判決に対し非常上告があつたときは、旧刑訴第五二〇条第一号但書の場合に該当する。
法定刑を超える刑を言い渡した確定判決に対する非常上告事件の裁判
刑法130条,罰金等臨時措置法3条1項1号,旧刑訴法520条
判旨
住居侵入罪の法定刑は「三年以下の懲役又は五十円以下の罰金」であり、これを超えて被告人を罰金五百円に処した原判決には法令適用の誤りがあるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
住居侵入罪(刑法130条)の法定刑が「五十円以下の罰金」であるにもかかわらず、これを超える「罰金五百円」を言い渡した原判決について、法令適用の誤りがあるか。また、確定判決の法令違反を是正するための非常上告が認められるか。
規範
裁判所は、被告人の所為が特定の刑罰法規に該当すると判断した場合、当該法規が規定する法定刑の範囲内で刑を量定しなければならない。法定刑の上限を超える刑を言い渡すことは、刑罰法令の適用を誤った違法な裁判となる。
重要事実
被告人は、故なく他人の住居に侵入したとして住居侵入罪で起訴された。第一審(福岡地方裁判所)は、刑法130条を適用して被告人を罰金500円に処する旨の判決を言い渡し、同判決は確定した。しかし、当時の刑法130条が定める罰金刑の上限は50円であった。
事件番号: 昭和28(さ)3 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】刑法130条前段の住居侵入罪に処する場合、当時の罰金等臨時措置法に基づき算出される罰金の法定限度額を超えて刑を科すことは、法令に違反し許されない。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀の上、工場の塀を乗り越えて工場敷地内に無断侵入した。第一審判決に対し、原審(控訴審)は科刑が軽すぎるとして自ら判…
あてはめ
本件における住居侵入罪の法定刑は、刑法130条により「三年以下の懲役又は五十円以下の罰金」と定められている。原判決は、被告人の住居侵入の事実を認定しながら、罰金刑を選択するにあたって法定限度額である50円を大幅に超える500円を言い渡している。これは、同条の規定する刑罰の範囲を逸脱した処断であり、明らかに法令の適用を誤ったものであるといえる。この違反は被告人に不利益なものであるから、旧刑事訴訟法520条1号但書等の規定に基づき是正されなければならない。
結論
原判決を破棄する。被告人を法定刑の範囲内である罰金50円に処し、完納できない場合は2日間の労役場留置を命ずる。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、法定刑の範囲を逸脱した判決が「法令の適用の誤り」に該当することを明確にした事例。実務上、確定判決に法令違反があり、かつ被告人に不利益な場合には、非常上告によって救済されるべきであることを示す典型的な事案である。
事件番号: 昭和32(さ)5 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定判決において、刑法130条の住居侵入罪に対し法定刑の最高額を超える罰金を科したことは、法令に違反し被告人に不利益な裁判であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の罪により、昭和25年に旭川地方裁判所留萠支部で罰金3000円に処せられ、その判決が確定し…
事件番号: 昭和36(さ)1 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の最高額を超過する罰金を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかであるため、非常上告に基づき当該命令を破棄し、適正な刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により、簡易裁判所の略式命令にて罰金3,000円(不完納時労役場留置1日2…
事件番号: 昭和32(さ)4 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、刑法130条及び罰金等臨時措置法所定の罰金刑の最高額を超える金額を科した判決は法令に違反する。そのため、非常上告に基づき原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内で自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により略式命令を受け、罰金3,000円を科された。しかし、当時…