法定刑超過の事例(非常上告)
刑訴法458条1号但
判旨
売春防止法10条1項違反の罪に対し、同法が定める法定刑の多額を超える罰金刑を科した判決は、法令の適用に誤りがある違法なものとして破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
確定判決において、売春防止法10条1項違反の罪に対し、当時の法定刑の上限(10万円)を超える罰金(20万円)を科したことが、非常上告の理由となる法令違反に該当するか。
規範
刑罰を科すに際しては、当該罪名に対して法律が定める法定刑の範囲内で行わなければならない。法定刑の多額を超える刑を科すことは、刑法1条(罪刑法定主義)および刑事訴訟法458条1号に照らし、法令の適用に誤りがある違法な裁判となる。
重要事実
被告人は、売春をさせることを内容とする契約を締結し、売春防止法10条1項違反の罪に問われた。第一審判決は、同条および同法15条を適用し、被告人を懲役1年および罰金20万円に処した。被告人の控訴は棄却され、当該判決は一旦確定した。しかし、当時の売春防止法10条1項の罰金刑の法定刑上限は10万円であったため、判決が法定の多額を超えていたことが判明した。
あてはめ
売春防止法10条1項が定める罰金刑の多額は10万円である。これに対し、原判決は被告人に対し罰金20万円を科しており、法律が許容する刑罰の範囲を逸脱している。このような法定の刑の多額を超えて罰金刑を科した判決は、法令の適用に誤りがあるといわざるを得ない。また、これは被告人にとって実質的に不利益な処分であるといえる。
事件番号: 平成11(さ)1 / 裁判年月日: 平成11年9月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】売春防止法5条1号違反の罪に対する罰金刑の法定刑は、罰金等臨時措置法2条1項により2万円以下とされているため、これを超える罰金刑を科した略式命令は法令違反であり、破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は、路上において通行人に対し、売春をする目的で「金は二万円」等と申し向け、公衆の目に触れる方法…
結論
原判決には法定の刑の多額を超えて罰金刑を科した違法がある。したがって、刑訴法458条1号但書により原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内である罰金10万円を科すものとする。
実務上の射程
本判決は非常上告の手続において、法定刑を逸脱した判決が「法令の適用に誤りがある」として破棄される典型例を示すものである。実務上、罰金刑と懲役刑の併科規定がある場合や改正前後の経過措置が問題となる場面で、法定刑の範囲を正確に把握することの重要性を示唆している。
事件番号: 昭和47(さ)1 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】法定刑の上限を超える罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が売春防止法違反の事実により略式命令を受けた事案。小樽簡易裁判所は、罰金刑の最高額が1万円である同法5条1号を適用しながら、被告人に対し罰金3万円を科…
事件番号: 昭和46(さ)4 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した判決において科された罰金刑が法定刑の上限を超えている場合、当該判決は違法であり、被告人の不利益になるため破棄を免れない。法令に基づき、適正な法定刑の範囲内で改めて刑を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は賍物牙保罪(当時の刑法256条2項)により、懲役1年および罰金10万円、懲役…
事件番号: 昭和28(さ)3 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】刑法130条前段の住居侵入罪に処する場合、当時の罰金等臨時措置法に基づき算出される罰金の法定限度額を超えて刑を科すことは、法令に違反し許されない。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀の上、工場の塀を乗り越えて工場敷地内に無断侵入した。第一審判決に対し、原審(控訴審)は科刑が軽すぎるとして自ら判…