法定刑超過による非常上告
刑訴法458条1号
判旨
売春防止法5条1号違反の罪に対する罰金刑の法定刑は、罰金等臨時措置法2条1項により2万円以下とされているため、これを超える罰金刑を科した略式命令は法令違反であり、破棄を免れない。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、法律に定められた罰金額の上限を超える刑を科した場合、非常上告の対象となる「法令に違反し、かつ、被告人のために不利益である」事由に該当するか。
規範
罰金刑を科すに当たっては、当該罪名について定められた法定刑の範囲内で行わなければならない。特に売春防止法5条各号の罪については、罰金等臨時措置法2条1項の規定に従い、法定刑の上限(本件当時は2万円)を遵守する必要がある。
重要事実
被告人は、路上において通行人に対し、売春をする目的で「金は二万円」等と申し向け、公衆の目に触れる方法で人を売春の相手方となるよう勧誘した。大阪簡易裁判所は、これに対し売春防止法5条1号を適用し、被告人を罰金5万円に処する旨の略式命令を発し、同命令は確定した。
あてはめ
売春防止法5条1号及び罰金等臨時措置法2条1項の規定に照らすと、本罪の罰金刑の上限は2万円である。しかるに、原略式命令はこれを超過する5万円の罰金を科している。このことは、罪刑法定主義の観点からも許容されない明白な法令違反であり、かつ、被告人に法定刑以上の金銭的負担を強いるものであるから、被告人のために不利益な誤りであるといえる。
事件番号: 昭和47(さ)1 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】法定刑の上限を超える罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が売春防止法違反の事実により略式命令を受けた事案。小樽簡易裁判所は、罰金刑の最高額が1万円である同法5条1号を適用しながら、被告人に対し罰金3万円を科…
結論
原略式命令を法令違反として破棄する。被告人を法定刑の範囲内である罰金2万円に処し、完納不能時の労役場留置を命ずる。
実務上の射程
実務上、略式命令等の確定裁判に法定刑超えの過誤があった場合の非常上告手続(刑訴法454条以下)の具体例として機能する。答案作成上は、刑罰権の行使が法定刑の範囲に制約されるという原則を確認する際の素材となる。
事件番号: 昭和48(さ)1 / 裁判年月日: 昭和48年4月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】売春防止法10条1項違反の罪に対し、同法が定める法定刑の多額を超える罰金刑を科した判決は、法令の適用に誤りがある違法なものとして破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、売春をさせることを内容とする契約を締結し、売春防止法10条1項違反の罪に問われた。第一審判決は、同条および同法15条を…
事件番号: 昭和56(さ)3 / 裁判年月日: 昭和56年7月17日 / 結論: 破棄自判
舞台上で演じられた男女二組のシヨーに照明をあてて公然わいせつの犯行を容易ならしめた所為は、一個の公然わいせつ行為を幇助したものである。
事件番号: 平成6(さ)2 / 裁判年月日: 平成7年3月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】毒物及び劇物取締法違反の罪に対し、法定刑の上限(罰金3万円)を超える罰金5万円を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、吸入目的でトルエンを含有するシンナーを所持したとして、毒物及び劇物取締法違反により罰金5…
事件番号: 平成8(さ)7 / 裁判年月日: 平成8年9月5日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】酒気帯び運転の罪に対し、法定刑の上限(5万円)を超える罰金(10万円)を科した略式命令は、法令に違反し、被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気を帯びた状態で普通乗用自動車を運転した。簡易裁判所は、道路交通法65条1項、119条1項7号の二に基…