刑法第二五条第二項は、前に禁錮以上の刑に処せられその執行を猶予せられた者に対して一年を超える懲役若くは禁錮または罰金の言渡をなすときは、その執行を猶予することができない趣旨である。
刑法第二五条第二項の法意
刑法25条
判旨
前に禁錮以上の刑に処せられその執行を猶予された者が、猶予期間中にさらに罪を犯した場合に、再度の執行猶予(刑法25条2項)を付するためには、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」であることを要し、これを超える刑を言い渡す場合には再度の執行猶予を付することはできない。
問題の所在(論点)
執行猶予期間中の者がさらに罪を犯した場合において、1年を超える懲役および罰金の言渡しをしながら、刑法25条2項を適用して再度の執行猶予を付すことの可否(再度の執行猶予の刑期の限界)。
規範
刑法25条2項の適用要件として、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が、新たに罪を犯して「1年以下の懲役又は禁錮の言渡し」を受け、かつ情状特に憫諒すべきものがあることが必要である。したがって、1年を超える懲役若しくは禁錮、又は罰金の言渡しを受けた場合には、同条項に基づきその執行を猶予することは法律上許されない。
重要事実
被告人は、以前に覚せい剤取締法違反で懲役8月(執行猶予3年)の判決を受け、その後減刑等により懲役6月(執行猶予2年3月)となった前科を有していた。この執行猶予期間中に、被告人は新たに覚せい剤の譲渡、所持、および賍物牙保の罪を犯した。原審は、被告人を懲役1年2月および罰金1000円に処した上で、刑法25条2項を適用し、その懲役および罰金の双方について3年間の執行猶予を言い渡した。
あてはめ
本件被告人は、前刑の執行猶予期間中であるため、再度の執行猶予を付すには刑法25条2項の要件を充たす必要がある。しかし、原審が言い渡した刑は「懲役1年2月及び罰金1000円」である。これは、同条項が規定する上限である「1年以下の懲役又は禁錮」を超えている。したがって、原審が認定した事案において懲役1年2月を宣告しながら執行を猶予することは、刑法25条2項の適用を誤った明らかな法令違反にあたる。
結論
1年を超える懲役を言い渡す場合には、刑法25条2項を適用して執行を猶予することはできない。本件原判決のうち、同条項を適用して執行を猶予した部分は法令に違反するため破棄される(ただし、被告人に不利益な変更はなされない)。
実務上の射程
再度の執行猶予の要件(刑期の上限が1年以下であること)を確認した判例である。司法試験においては、事案の被告人に前科(執行猶予中)がある場合、宣告刑の重さに応じて再度の執行猶予が可能かどうかを検討する際の基礎的な判断枠組みとして用いる。実務上は、主文で「1年を超える懲役」と「執行猶予」が両立し得ないことを示す絶対的な制約として機能する。
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…
事件番号: 昭和46(さ)4 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した判決において科された罰金刑が法定刑の上限を超えている場合、当該判決は違法であり、被告人の不利益になるため破棄を免れない。法令に基づき、適正な法定刑の範囲内で改めて刑を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は賍物牙保罪(当時の刑法256条2項)により、懲役1年および罰金10万円、懲役…
事件番号: 昭和29(さ)4 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 破棄自判
昭和二九年法律五九号の附則二項は、同法施行前の犯罪については、同法施行後の犯罪と併合罪に当らない限り、右刑法二五条ノ二、一項前段の改正規定の適用がない旨を規定しているから、右法律五七号施行前のみの犯罪にかかる本件被告事件につき刑の執行猶予を言い渡す場合において、被告人を保護観察に対することを得ないものであることもまた明…