法定刑超過による非常上告
刑法204条、刑訴法458条1号但
判旨
傷害罪の罰金法定刑の最高額が10万円であるにもかかわらず、これを超過して被告人を罰金20万円に処した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、当時の法律上の上限額(10万円)を上回る罰金(20万円)を科したことが、刑事訴訟法458条1号にいう「裁判が法令に違反したとき」および「被告人のために不利益であるとき」に該当するか。
規範
裁判が法令に違反し、かつ被告人のために不利益なときは、刑法および特別法が定める法定刑の範囲を逸脱した刑を科すことは許されない。このような確定判決(略式命令を含む)は、刑事訴訟法458条1号但書に基づき、非常上告の手続きによって破棄され、正しい刑の範囲内で是正されるべきである。
重要事実
被告人は昭和54年10月16日、被害者に対し手拳で殴打する等の暴行を加え、加療約2週間を要する傷害を負わせた。これに対し簡易裁判所は、刑法204条等を適用し、被告人を罰金20万円に処する旨の略式命令を発付し、同命令は同年11月15日に確定した。しかし、当時の罰金等臨時措置法3条1項1号によれば、傷害罪の罰金刑の最高限度は10万円であった。
あてはめ
傷害罪(刑法204条)に適用される罰金等臨時措置法3条1項1号(当時)の規定に照らせば、本罪の罰金の法定刑の最高額は10万円である。本件の略式命令は、この上限を10万円超過して被告人を罰金20万円に処している。したがって、当該裁判は明白に法令に違反しており、かつ法定刑の上限を超える刑を課されている点において被告人のために不利益であると解される。
事件番号: 昭和40(さ)3 / 裁判年月日: 昭和40年7月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高額を超過する罰金を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であることが明白であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により札幌簡易裁判所から罰金30,000円の略式命令を受け、同命令は昭和39年11月27日に確定した。しかし、…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金10万円に処し、完納できない場合は1日を2000円に換算して労役場に留置する。
実務上の射程
非常上告において「裁判が法令に違反した」ことのみならず「被告人のために不利益」であることを要件とする(刑訴法458条1号但書)場面で、法定刑の上限逸脱がこれに該当することを明確に示した事例。実務上、刑の執行前であれば救済の必要性が高く、形式的な法令違反を超えた実質的な不利益性を判断する際の基礎となる。
事件番号: 昭和39(さ)10 / 裁判年月日: 昭和40年3月4日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金刑の最高額が当時2万5000円であったにもかかわらず、これを超過して3万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益である。したがって、非常上告に基づき原命令を破棄し、法定刑の範囲内である罰金2万5000円の自判を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、…
事件番号: 昭和41(さ)3 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高限度を超えて罰金を科した略式命令は、法令違反であり被告人に不利益な裁判にあたるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により、福岡簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。しかし、当時の刑法204条および罰金等臨時措置法3条1項…
事件番号: 昭和43(さ)1 / 裁判年月日: 昭和43年6月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】裁判所が傷害罪の法定刑(罰金)の上限を超えて罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告の手続きにおいて破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、昭和41年8月4日付の略式命令により罰金3万円に処せられ、同年8月23日に確定した。しかし…