判旨
法定刑の最高限度を超えて罰金を科した略式命令は、法令違反であり被告人に不利益な裁判にあたるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、法定刑の最高額を超過する罰金刑を科したことが、刑事訴訟法458条1号にいう「法令に違反」し、かつ「被告人のため不利益」であるといえるか。
規範
確定判決が法令に違反し、かつ被告人のため不利益である場合には、刑事訴訟法458条1号但書に基づき、原判決を破棄し、自ら被告事件について判決を言い渡すことができる。
重要事実
被告人は傷害の事実により、福岡簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。しかし、当時の刑法204条および罰金等臨時措置法3条1項1号が定める傷害罪の罰金刑の最高額は2万5000円であった。
あてはめ
傷害罪に対する罰金の法定刑の最高額は2万5000円である。本件の略式命令はこれを大幅に超過する罰金4万円を科しており、客観的に法令の規定を逸脱している。また、法定の上限を超える財産的制裁を課すことは、当然に被告人にとって不利益な裁判に該当すると解される。
結論
原略式命令を破棄する。被告人を法定刑の範囲内である罰金2万5000円に処する。
実務上の射程
本判決は非常上告の手続きにおいて、量刑が法定刑を逸脱している場合の救済のあり方を示す。司法試験実務基礎や訴訟法において、確定判決の誤りを正す非常上告の要件(法令違反・不利益性)を具現化した典型例として参照される。
事件番号: 昭和43(さ)1 / 裁判年月日: 昭和43年6月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】裁判所が傷害罪の法定刑(罰金)の上限を超えて罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告の手続きにおいて破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、昭和41年8月4日付の略式命令により罰金3万円に処せられ、同年8月23日に確定した。しかし…
事件番号: 昭和40(さ)3 / 裁判年月日: 昭和40年7月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高額を超過する罰金を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であることが明白であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により札幌簡易裁判所から罰金30,000円の略式命令を受け、同命令は昭和39年11月27日に確定した。しかし、…
事件番号: 昭和39(さ)10 / 裁判年月日: 昭和40年3月4日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金刑の最高額が当時2万5000円であったにもかかわらず、これを超過して3万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益である。したがって、非常上告に基づき原命令を破棄し、法定刑の範囲内である罰金2万5000円の自判を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、…
事件番号: 昭和56(さ)2 / 裁判年月日: 昭和56年4月30日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金法定刑の最高額が10万円であるにもかかわらず、これを超過して被告人を罰金20万円に処した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和54年10月16日、被害者に対し手拳で殴打する等の暴行を加え、加療約2週間…