判旨
傷害罪の罰金刑の最高額が当時2万5000円であったにもかかわらず、これを超過して3万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益である。したがって、非常上告に基づき原命令を破棄し、法定刑の範囲内である罰金2万5000円の自判を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、当時の法令(罰金等臨時措置法)が定める法定刑の最高額を超過する罰金を科したことが、非常上告の理由となる法令違反に該当するか、およびその是正措置が問題となる。
規範
裁判がその審判の法令に違反したときは、非常上告の対象となる(刑訴法458条1号)。特に、確定判決において法定刑の最高額を超過する刑を科した事案は、「法令に違反し、かつ、被告人のため不利益である」場合に該当し、破棄自判の対象となる。
重要事実
被告人は傷害被告事件につき、昭和39年6月30日付の下関簡易裁判所の略式命令により、罰金3万円(不完納の場合の換算は1日250円)に処せられた。右命令は同年7月18日に確定した。しかし、当時の刑法204条および罰金等臨時措置法3条1項1号の規定に照らすと、傷害罪の罰金刑の最高額は2万5000円であった。
あてはめ
傷害罪の罰金の法定最高額が2万5000円であるのに対し、原略式命令は被告人を罰金3万円に処している。これは法令に違反するだけでなく、法定限度を超える刑を課されている点で被告人にとって明らかに不利益であるといえる。したがって、刑訴法458条1号但書を適用し、原命令を破棄した上で、自ら被告事件について判決(自判)を行うべきである。認定された傷害の事実に法令を適用すると、所定の罰金刑の範囲内で罰金2万5000円に処するのが相当である。
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金2万5000円に処し、完納できない場合は金250円を1日に換算した期間、労役場に留置する。
事件番号: 昭和40(さ)3 / 裁判年月日: 昭和40年7月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高額を超過する罰金を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であることが明白であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により札幌簡易裁判所から罰金30,000円の略式命令を受け、同命令は昭和39年11月27日に確定した。しかし、…
実務上の射程
本判決は非常上告の手続に関するものであるが、実務上の教訓としては、法定刑の枠組み(特に特別法による修正)の確認を怠ることは、確定判決の効力を覆すべき重大な法令違反を構成することを示す。答案作成上は、罪刑法定主義の観点から、刑罰が法定の範囲内にあるかを確認する際の基礎的な論理を補強する例となる。
事件番号: 昭和43(さ)1 / 裁判年月日: 昭和43年6月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】裁判所が傷害罪の法定刑(罰金)の上限を超えて罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人の不利益になるため、非常上告の手続きにおいて破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、昭和41年8月4日付の略式命令により罰金3万円に処せられ、同年8月23日に確定した。しかし…
事件番号: 昭和41(さ)3 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高限度を超えて罰金を科した略式命令は、法令違反であり被告人に不利益な裁判にあたるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により、福岡簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。しかし、当時の刑法204条および罰金等臨時措置法3条1項…
事件番号: 昭和56(さ)2 / 裁判年月日: 昭和56年4月30日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金法定刑の最高額が10万円であるにもかかわらず、これを超過して被告人を罰金20万円に処した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和54年10月16日、被害者に対し手拳で殴打する等の暴行を加え、加療約2週間…