罰金の法定刑を超過してなされた略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法458条
判旨
建造物侵入罪の罰金刑の最高額が2,500円であるにもかかわらず、これを超過する5,000円の罰金に処した略式命令は、法令違反であり被告人の不利益になる。そのため、非常上告に基づき原命令を破棄し、適正な法定刑の範囲内で処断し直すのが相当である。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、法定刑の最高額を超過する罰金額を科したことが、非常上告における「法令の違反」および「被告人のため不利益」に該当するか。
規範
特定の罪について罰金刑を科す場合、適用される法令(刑法、罰金等臨時措置法等)によって定められた法定刑の最高額を超えて処断することはできない。これを超過する刑を言い渡した確定判決は、刑事訴訟法458条1号但書にいう「法令に違反した」ものであり、かつ被告人のため不利益な場合に該当し、非常上告による破棄自判の対象となる。
重要事実
被告人は、金員窃取の目的で歯科診療室2階の技工室に侵入した。これに対し、大分簡易裁判所は建造物侵入罪(刑法130条前段)を適用し、昭和45年10月19日に罰金5,000円の略式命令を発し、同命令は確定した。しかし、当時の罰金等臨時措置法等の規定によれば、同罪の罰金刑の最高額は2,500円であった。
あてはめ
建造物侵入罪について刑法130条および当時の罰金等臨時措置法3条を適用した場合、選択できる罰金刑の最高額は2,500円である。本件原略式命令が言い渡した「罰金5,000円」は、この法的限度を明らかに超過しており、法の適用を誤った法令違反があるといえる。また、適正な上限額の2倍の金額を科していることから、被告人にとって不利益な裁判であることは明らかである。したがって、刑訴法458条1号但書に基づき、自ら被告事件について判決をなすべきである。
結論
原略式命令を法令違反および被告人への不利益を理由に破棄する。確定した事実に法律を適用し直し、被告人を法定刑の範囲内である罰金2,500円に処する。
実務上の射程
法定刑の誤認という明白な法令違反に対する非常上告の処理例を示す。司法試験実務基礎や刑訴法において、確定判決の是正手続(非常上告)の要件(法令違反・不利益)を具体化する際の基礎資料となる。
事件番号: 昭和36(さ)1 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の最高額を超過する罰金を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかであるため、非常上告に基づき当該命令を破棄し、適正な刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により、簡易裁判所の略式命令にて罰金3,000円(不完納時労役場留置1日2…
事件番号: 昭和49(さ)3 / 裁判年月日: 昭和49年11月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条に基づき、行為時法と裁判時法の重さを比較し、最も軽い刑を適用しなければならない。法定刑の上限を超える罰金額を科した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は昭和47年5月に住居侵入罪を犯し、昭和48年3月に罰金7,000円…
事件番号: 昭和39(さ)10 / 裁判年月日: 昭和40年3月4日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金刑の最高額が当時2万5000円であったにもかかわらず、これを超過して3万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益である。したがって、非常上告に基づき原命令を破棄し、法定刑の範囲内である罰金2万5000円の自判を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、…
事件番号: 昭和32(さ)4 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、刑法130条及び罰金等臨時措置法所定の罰金刑の最高額を超える金額を科した判決は法令に違反する。そのため、非常上告に基づき原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内で自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により略式命令を受け、罰金3,000円を科された。しかし、当時…