化粧品、雑貨等の卸売りならびにこれに付帯する業務を目的とする会社の代表取締役が、穀物等の商品取引のため会社財産から委託証拠金を支払つた行為(判文参照)は、「営業の範囲外」にあると認められ、これについて商法四八九条四号違反の罪が成立する。
商法四八九条四号違反の罪が成立するとされた事例
商法489条4号
判旨
代表取締役が会社の目的範囲外の投機取引に会社財産を充てた行為は、社会通念上、定款所定の目的又は付帯的業務の通常の範囲内にあるとは認められず、特別背任罪における「会社の営業の範囲外」の行為に該当する。
問題の所在(論点)
代表取締役が、定款所定の目的とは異なる投機取引(商品取引)のために会社財産を処分した行為が、旧商法489条4号(現行会社法960条1項等の特別背任罪に相当)の「会社の営業の範囲外」の行為にあたるか。
規範
「会社の営業の範囲外」にあたるか否かは、社会通念に照らし、定款所定の目的に沿う業務又はその遂行上必要な付帯的業務の通常の範囲内にあるといえるか否かによって判断すべきであり、その範囲を逸脱した客観的に別個独立の経済活動と認められる場合には、営業の範囲外にあたる。
重要事実
化粧品・雑貨等の卸売及び付帯業務を目的とする資本金200万円の会社において、代表取締役である被告人が、営業上の損失を補填する意図で別途穀物等の商品取引を行い、計26回にわたり会社財産から合計約1999万円を委託証拠金として支払い、差損金に充当した。
あてはめ
被告人の行為は、会社本来の目的である化粧品・雑貨等の卸売とは無関係な投機取引である。資本金200万円の規模に対して約2000万円という多額の会社財産を投入している点、及び取引の内容に照らせば、社会通念上、定款所定の目的やその付帯業務の通常の範囲内とは到底認められない。したがって、本件取引は営業範囲外の客観的に別個独立の経済活動であると評価される。
結論
被告人の行為は「会社の営業の範囲外」にあるものとして、特別背任罪が成立する。
実務上の射程
会社法上の特別背任罪や利益供与等の文脈において、「目的の範囲内」の解釈(民法34条参照)を検討する際の参考となる。特に、営利目的であっても本来の事業と関連性の乏しい投機的取引については、その態様や規模に照らして「営業の範囲外」とされる可能性が高いことを示している。
事件番号: 平成6(あ)544 / 裁判年月日: 平成9年10月28日 / 結論: 棄却
百貨店の代表取締役は、商品の仕入れに当たり、仕入原価をできる限り廉価にするなど仕入れに伴う無用な支出を避けるべき任務を負うものであり、特定の業者の利益を図る目的をもって、右任務に背いて右業務を納入業者と百貨店との間に介在させて差益を取得させ、それと同額の損害を百貨店に与えた本件においては、右代表取締役には特別背任罪が成…
事件番号: 平成14(あ)1431 / 裁判年月日: 平成17年10月7日 / 結論: 棄却
商社の代表取締役社長がその任務に違背して巨額の融資を行った場合において,融資実行の動機は同社の利益よりも自己らの利益を図ることにあり,同社に損害を加えることの認識,認容もあったなど判示の事実関係の下では,特別背任罪における図利目的はもとより加害目的をも認めることができる。
事件番号: 平成15(あ)59 / 裁判年月日: 平成17年10月7日 / 結論: 棄却
甲社の絵画等購入担当者である乙らが,丙の依頼を受けて,甲社をして丙が支配する丁社から多数の絵画等を著しく不当な高額で購入させ,甲社に損害を生じさせた場合において,その取引の中心となった甲と丙の間に,それぞれが支配する会社の経営がひっ迫した状況にある中,互いに無担保で数十億円単位の融資をし合い,各支配に係る会社を維持して…