原判決に累次の法令違反がある場合と正義
判旨
売春防止法11条2項の業として売春の場所を提供する罪(故意犯)と、同法14条に基づく事業主の両罰規定(過失犯)は、性質を異にする別罪であり、これらを包括一罪として処断することはできない。原判決には理由不備等の法令違反があるが、正当な法令適用によっても宣告刑が処断刑の範囲内であれば、原判決を破棄しないことが許容される。
問題の所在(論点)
売春防止法11条2項の罪と、同法14条に基づく両罰規定による罪の罪数関係、および過失犯である14条違反の罪に対して故意犯の罰条を適用し、本来科し得ない懲役刑を科すことの違法性。
規範
売春防止法11条2項の罪(場所提供を業とする罪)は故意犯であるのに対し、同法14条に基づく事業主の処罰規定は、従業員等の違反行為に対する選任監督上の過失を前提とする過失犯としての性質を有する。したがって、両者は別罪として処理すべきであり、これらを包括一罪として一律の罰条で処断することは許されない。
重要事実
被告人は旅館を経営しており、従業員Bが2回、被告人自身が2回、それぞれ売春の場所を提供した。第1審はBの行為について11条1項(単純場所提供)の成立を認め、被告人を14条により処断した。原判決(控訴審)は、これら計4回の場所提供を全て被告人の11条2項(業として場所提供)の罪として認定し、懲役刑を科した。しかし、判文上、Bの行為につき被告人を14条の両罰規定で処断する趣旨か、被告人自身の11条2項の罪とするのかが不明確であった。
あてはめ
原判決は、Bが行った場所提供についても14条違反として認定しながら、全体に11条2項を適用している。11条2項は故意犯、14条は過失犯であり、別罪として処理すべきところ、これらを包括一罪としたのは誤りである。また、14条違反のみでは罰金刑しか科せないにもかかわらず、懲役刑を科した点も違法である。さらに、Bの行為が11条1項と2項のいずれに該当するかを確定せず被告人を処断した点において、理由不備の違法も認められる。
結論
原判決には複数の法令違反が認められる。しかし、Bの行為につき14条・11条1項、被告人の行為につき11条2項が成立すると認めることができ、正当な法令適用を行っても宣告刑は処断刑の範囲内かつ相当であるため、原判決を破棄しない。
実務上の射程
行政刑法における両罰規定(過失犯的性格)と、直接の処罰規定(故意犯)を混同してはならないという罪数論・罰則適用の原則を示す。また、刑訴法上の「著しく正義に反する」といえない場合の破棄自判の抑制(上告棄却)の判断枠組みとしても参考になる。
事件番号: 昭和44(あ)1379 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
料理店を経営する者が、雇い入れた仲居との間に、対償分配の約束で、売春をさせることを内容とする契約をしたうえ、その売春に際し、多数回にわたり反覆して客室を提供した行為については、売春防止法一〇条一項および一一条二項各違反の罪の併合罪が成立する。