判旨
売春防止法14条に基づく両罰規定により法人を処罰する場合、事業主たる法人が従業員の違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたことの主張・立証がない限り、法人の刑事責任が認められる。
問題の所在(論点)
売春防止法14条の両罰規定を適用するに際し、事業主(法人)が刑事責任を免れるための要件、およびその主張・立証責任の所在が問題となる。
規範
両罰規定による事業主(法人)の処罰は、従業員等の違反行為に対する選任・監督上の過失を根拠とする。この場合、事業主側において、当該違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたことについての主張・立証がなされない限り、事業主はその責を免れることはできない。
重要事実
被告会社が経営する旅館において、従業員である番頭2名が、その業務に関し、売春防止法11条2項(場所提供罪)に該当する行為を行った。第一審判決は、両罰規定である同法14条を適用して被告会社を処罰したが、これに対し被告会社側は、事業主処罰の趣旨に照らし、法人の刑事責任を認めるべきではないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告会社の従業員である番頭2名の行為は、被告会社の業務に関し行われたものと認められる。また、記録によれば、事業主である被告会社がこれらの従業員の違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたという点について、被告側から具体的な主張や立証がなされた事実は認められない。したがって、被告会社に過失がなかったとはいえず、同法14条の適用を妨げる事情は存在しない。
結論
事業主が違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたことの主張・立証がない以上、売春防止法14条に基づき被告会社を処罰した判断は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(あ)2341 / 裁判年月日: 昭和38年2月26日 / 結論: 棄却
売春防止法第一四条は、業務主たる人の代理人、使用人その他の従業者が同法第九条等に違反した行為につき、業務主に右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、したがつて業務主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、業務主もまた刑責を免れない…
両罰規定における事業主の過失の推定を認めた判例として重要である。実務上は、過失の有無に関する立証責任が事実上、被告人(事業主)側に転換されていると解されており、答案上は、従業員の行為が業務に関し行われたことを示した上で、事業主による選任・監督上の過失を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 昭和39(あ)104 / 裁判年月日: 昭和39年6月16日 / 結論: 棄却
売春防止法第一四条により法人を処罰するには、その代表者又は従業者がその法人の業務に関し、同条所定の違反行為をしたことが証明されれば足り、行為者が処罰されることを要件とするものではない(昭和二九年(あ)第二〇一〇号同三一年一二月二二日第二小法廷決定、刑集一〇巻一二号一六八三頁参照)。