弁護人の上告趣意は、憲法第一四条違反をいうが、売春防止法第一二条の規定は、同条に該当する行為をした者は何人であつてもその罪責を問う趣旨であつて、その行為者の人種、信条、性別、社会的身分又は門地によつて差別的な取扱いをしているものではないから、右違憲の主張は前提を欠き、採るをえない。
売春防止法第一二条と憲法第一四条。
売春防止法12条,憲法14条
判旨
売春防止法12条の「売春させる」という構成要件の充足には、行為者と相手方との間に、一定の支配関係が設定されていることを要する。
問題の所在(論点)
売春防止法12条の「売春させる」という構成要件の解釈において、行為者と売春の相手方との間に「支配関係」が設定されていることが必要か。また、同条の規定が憲法14条の法の下の平等に反するか。
規範
売春防止法12条にいう「売春させる」とは、行為者が相手方に対して、ある種の支配関係を設定し、その支配に基づいて売春を行わせることをいう。単に対等な立場で勧誘・媒介するに留まらず、相手方の意思を制約する程度の支配・管理の存在を要件とする。
重要事実
本件被告人は、売春防止法12条(困惑等による売春)の罪に問われた。弁護側は、同条の適用において「売春させる」というためには支配関係が必要であるところ、原審はこの必要性を否定しており、憲法14条違反や判例違反があると主張して上告した。なお、具体的な犯行事実の詳細(被害者の年齢、困惑の程度等)については判決文からは不明である。
あてはめ
まず、憲法14条違反の主張については、同条が規定に該当する者であれば人種や性別等を問わず一律に罪責を問う趣旨であるため、差別的取扱いは存在しない。次に、構成要件の解釈について、判例上「売春させる」というためには、ある種の支配関係が設定されていることを要すると解される。本件原判決を検討するに、かかる支配関係の必要性を否定したものとは解されず、被告人の行為について支配関係の存在を前提に同条の成立を認めたものと判断できる。したがって、判例に反する法令解釈の誤りはない。
結論
売春防止法12条の成立には支配関係が必要であるが、被告人の所為はこれに該当し、同条は憲法14条にも違反しない。上告棄却。
実務上の射程
「売春させる」という文言を含む売春防止法の各条文(11条、12条等)の解釈において、支配関係の要否を判断する際の基礎となる判例である。司法試験においては、単なる周旋(あっせん)と「売春させた」ことの区別、あるいは被害者の自由な意思決定がどの程度阻害されているかを評価する際の規範として機能する。
事件番号: 昭和45(あ)220 / 裁判年月日: 昭和46年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春防止法12条の場所提供罪が成立するためには、犯人の占有管理する場所に売春婦が居住して売春をすることについて、犯人と売春婦との間に支配関係が存在することを要する。 第1 事案の概要:被告人が占有管理する場所において、売春婦が居住し売春を行っていた事案である。第一審および原審は、当該場所における売…