判旨
売春防止法12条の罪が成立するためには、犯人の占有管理する場所に売春婦が居住して売春をすることにつき、単なる事実上の居住にとどまらず、犯人による支配関係、すなわち売春婦を拘束して売春に従事させるに足りる程度の支配関係を必要とする。
問題の所在(論点)
売春防止法12条の「占有管理する場所に居住させて売春をさせることを業とした」といえるためには、場所的な管理事実を超えて、売春婦に対する人的な支配・拘束関係までが必要となるか。
規範
売春防止法12条(場所の占有管理による売春の業務)の罪の構成要件を充足するためには、売春婦が犯人の占有管理する場所に居住して売春を行う事実があるだけでなく、犯人と売春婦との間に、当該売春婦を拘束して売春に従事させるに足りる「支配関係」が存在することを要する。
重要事実
被告人は、自らが占有管理する店舗において、売春婦を居住させて売春をさせることを業としていた。第一審および原審は、被告人の店舗に売春婦が居住し、そこで売春が行われていたという事実認定に基づき、売春防止法12条の罪の成立を肯定した。しかし、判決文によれば、被告人と売春婦との間における具体的な拘束性や支配の程度については、十分な事実認定がなされていなかった。
あてはめ
原判決は、単に被告人の店舗に売春婦が居住し売春していたという事実のみをもって同条の罪を認めた。しかし、同条の趣旨に照らせば、犯人が売春婦を支配下において売春に従事させているといえる必要があり、本件の事実関係のみでは「売春婦を拘束して売春に従事させるに足りる支配関係」があったと認めるには不十分である。したがって、構成要件の解釈適用を誤り、審理不尽の違法がある。
結論
売春婦に対する拘束的な支配関係が認められない限り、売春防止法12条の罪は成立しない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
場所的要件(占有管理)のみならず、人的要件(支配関係)を厳格に要求した判例である。答案上は、単なる場所の提供と、本条の「居住させて売春をさせる業務」を区別する際のメルクマールとして「拘束に足りる支配関係」というキーワードを用いるべきである。
事件番号: 昭和41(あ)1967 / 裁判年月日: 昭和42年11月28日 / 結論: 棄却
売春防止法第一二条にいう「居住させ」たとは、居住場所に対する事実上の支配関係を有することをもつて足り、居住自体について人を束縛強制し、その居所を転ずることを困難ならしめることを要しないものと解するのが正当である。