売春防止法第一二条にいう「居住させ」たとは、居住場所に対する事実上の支配関係を有することをもつて足り、居住自体について人を束縛強制し、その居所を転ずることを困難ならしめることを要しないものと解するのが正当である。
売春防止法第一二条にいう「居住させ」の意義
売春防止法12条
判旨
売春防止法12条の「居住させ」とは、居住場所に対する事実上の支配関係を有することをもって足り、居住自体について人を束縛強制し、その居所を転ずることを困難ならしめることを要しない。
問題の所在(論点)
売春防止法12条に規定される「居住させ」という要件の意義について、対象者の居住の自由を奪うような束縛・強制や、退去を困難ならしめる事情が必要とされるか。
規範
売春防止法12条にいう「居住させ」とは、対象者の居住場所に対し、行為者が事実上の支配関係を有している状態を指す。これに該当するためには、居住自体について人を身体的に束縛・強制したり、その場所から立ち去るなどの居所を転ずることを困難にさせたりといった心理的・物理的な抑圧状態を作り出すことまでは必要としない。
重要事実
被告人が、売春をさせる目的で、対象となる女性を一定の場所に居住させたとして売春防止法12条(売春目的の居住)の罪に問われた事案。弁護側は、同条の「居住させ」るというためには、対象者の身体を拘束したり、居所を離れることを困難にさせる程度の強制が必要であると主張して上告した。
あてはめ
本件における具体的な事実は判決文からは不明であるが、最高裁の示した判断枠組みによれば、被告人が対象者の居住場所を事実上支配している状況があれば、それ以上に女性を監禁したり、逃げ出せないように脅迫したりといった強制手段を用いていなくとも、同条の「居住させ」たという要件を充足すると判断される。
結論
売春防止法12条の「居住させ」るとは、居住場所に対する事実上の支配関係があれば足り、束縛や強制は不要である。したがって、被告人の行為は同条の構成要件に該当する。
実務上の射程
売春防止法における「居住させ」という文言の解釈を確定させた重要判例である。同法12条の成立を肯定するにあたっては、生活拠点の提供や管理といった「事実上の支配」を認定すれば足り、監禁罪や加重収賄罪等の他罪種で想定されるような強度の身体的拘束を立証する必要がないことを示しており、答案上も支配関係の有無に着目してあてはめるべきである。
事件番号: 昭和37(あ)273 / 裁判年月日: 昭和39年6月16日 / 結論: 棄却
弁護人の上告趣意は、憲法第一四条違反をいうが、売春防止法第一二条の規定は、同条に該当する行為をした者は何人であつてもその罪責を問う趣旨であつて、その行為者の人種、信条、性別、社会的身分又は門地によつて差別的な取扱いをしているものではないから、右違憲の主張は前提を欠き、採るをえない。