居住場所で旅館を経営する者が、売春婦らとの契約に基づいて、同女らを毎夕ほぼ定刻にその旅館に出勤集合させ、いつでも客の求めに応じうるような態勢で、翌朝三時ごろまで同旅館一階のたまり場において待機させ、その間無断で外出することを許さず、客があれば、みずからこれを売春婦にあてがい、対価の半額を取得して、同旅館二階の客室か又は同所が満員の場合自己の指示する旅館において客に売春をさせていたときは、売春婦らを自己の占有する場所に居住させて売春をさせることを業としたものとして、売春防止法第一二条のいわゆる管理売春の罪が成立する。
売春防止法第一二条のいわゆる管理売春の罪が成立するとされた事例
売春防止法12条
判旨
売春防止法12条の「居住させ」るとは、必ずしも起臥寝食の場所として強要することを要せず、売春婦を支配・監視が容易な場所に一定時間拘束し、生活の大部分を売春に従事させていれば、管理売春罪が成立する。
問題の所在(論点)
売春婦が別途独自の生活拠点(アパート等)を有し、旅館を起臥寝食の場としていない場合であっても、当該旅館に待機・拘束させて売春に従事させる行為は、売春防止法12条の「居住させ」て売春をさせる業務に該当するか。
規範
売春防止法12条の「居住させ」るという要件は、対象となる場所を起臥寝食に使用する場所として強要することまでを必要としない。本条の趣旨は、場所の支配を通じて売春婦の人身の自由を拘束する点にあり、売春婦が別途独自の居住場所を有していても、被告人の支配・監視が及ぶ場所に一定時間拘束され、生活の大部分を売春に従事せしめている実態があれば、本条の構成要件を充足する。
重要事実
被告人は旅館を経営し、7名の「通い」の売春婦を雇用していた。彼女らは夕方から翌朝3時頃まで同旅館の「溜り場」に集合待機を命じられ、無断外出を禁じられていた。被告人は客から対価を直接受け取り、指示した客室で売春を行わせていた。売春婦らは別に寝食を行うアパートを有しており、旅館に寝泊まりしていたわけではなかったため、弁護人は「居住」の要件を欠くと主張した。
あてはめ
売春婦らは毎夕定刻に出勤し、翌朝まで長時間にわたり被告人の支配・監視下にある旅館に待機させられていた。この間、無断外出が許されず、被告人が対価を管理し場所を指定していた事実に照らせば、彼女らは生活の大部分を売春のために過ごしていたといえる。このような心理的・行動的拘束は、場所的支配を通じた人身の自由に対する侵害を伴うものであり、別に住居があるとしても「居住させ」たものと評価できる。
結論
被告人の所為は売春防止法12条の管理売春罪に該当する。原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
管理売春罪の「居住」要件を、単なる寝泊まりではなく「生活時間の大部分にわたる場所的拘束」と広く捉える規範である。場所提供罪(11条)との区別において、被告人の指示・監督権限の強さや外出の自由の有無といった「支配関係」の強弱が判断のポイントとなる。
事件番号: 昭和45(あ)220 / 裁判年月日: 昭和46年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春防止法12条の場所提供罪が成立するためには、犯人の占有管理する場所に売春婦が居住して売春をすることについて、犯人と売春婦との間に支配関係が存在することを要する。 第1 事案の概要:被告人が占有管理する場所において、売春婦が居住し売春を行っていた事案である。第一審および原審は、当該場所における売…