旅館を経営する者が、多数回にわたり反覆してその客室を売春のために提供している場合には、売春場所提供の対価又は売春報酬の一部を取得した事実がなくても、売春防止法第一一条第二項の「売春を行う場所を提供することを業とした者」にあたる。
売春防止法第一一条第二項の「売春を行う場所を提供することを業とした者」にあたるとされた事例。
売春防止法11条2項
判旨
売春防止法11条2項の「売春を行う場所を提供することを業とした」といえるためには、反復継続の意思をもって場所を提供していれば足り、必ずしも対価や報酬を得ている必要はない。
問題の所在(論点)
売春防止法11条2項の「業とした者」に該当するためには、売春場所提供の対価や売春報酬の一部を取得していることが必要か。
規範
売春防止法11条2項にいう「売春を行う場所を提供することを業とした」とは、営利の目的の有無にかかわらず、反復継続の意思をもって、売春の場所を提供することを指す。したがって、売春場所提供の対価や、売春報酬の一部を取得していることは、同罪の成立に不可欠な要件ではない。
重要事実
旅館を経営する被告人が、多数回にわたり、反復して自らの客室を売春の場所として提供した。もっとも、被告人がその場所提供の対価や売春報酬の一部を直接取得していた事実は認められなかった。
事件番号: 昭和36(あ)1515 / 裁判年月日: 昭和37年5月17日 / 結論: 棄却
売春防止法第一一条第二項にいう「業とする」とは、反覆継続して行う意思のもとに同条項所定の行為をする場合を指称し、売春を行うための特別の設備を持ち、一個の業態として右行為をなすことを必要とするものではない。
あてはめ
本件において、被告人は旅館経営という立場を利用し、多数回にわたり反復して客室を売春のために提供している。このような反復継続性は、社会通念上「業として」場所を提供していると評価するに十分である。対価や報酬の取得は「業」の内容を構成する一要素にはなり得るが、本条の趣旨が売春を助長する場所提供行為の抑止にあることに鑑みれば、対価等の取得がなくとも、反復継続の事実をもって同条の罪が成立すると解するのが相当である。
結論
被告人は、売春場所提供の対価等を取得していなくとも、売春防止法11条2項の「売春を行う場所を提供することを業とした者」に該当する。
実務上の射程
「業として」の意義について、対価性(営利性)を必須とせず、反復継続性に重点を置く判断を示したものである。司法試験においては、特別刑法の解釈のみならず、刑法上の他の「業務」や「業として」の概念(業務上過失致死傷罪等)を論じる際、対価の有無が本質的ではないことを示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1154 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春防止法12条にいう「売春をさせることを業とした」とは、反復継続の意思をもって売春をさせる行為を行うことをいい、特定の事実関係に基づき当該要件に該当すると判断される。 第1 事案の概要:被告人は、売春をさせる行為に関与し、第一審および原審において「売春をさせることを業とした者」に該当すると認定さ…