料理店を経営する者が、雇い入れた仲居との間に、対償分配の約束で、売春をさせることを内容とする契約をしたうえ、その売春に際し、多数回にわたり反覆して客室を提供した行為については、売春防止法一〇条一項および一一条二項各違反の罪の併合罪が成立する。
売春防止法一〇条一項違反の罪と一一条二項違反の罪が併合罪の関係にあるとされた事例
売春防止法10条1項,売春防止法11条2項,刑法45条
判旨
料理店経営者が仲居に売春をさせる契約を締結し、多数回にわたり売春のために客室を提供した場合、売春させる契約の罪(売春防止法10条1項)と場所提供の罪(同法11条2項)は併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
売春をさせる契約を締結した者が、その契約に基づき反復して売春の場所を提供した場合、売春防止法10条1項(売春をさせる契約の罪)と11条2項(場所提供の罪)の罪数関係をいかに解すべきか。
規範
売春をさせる契約を締結する行為と、その契約に基づく売春の実行に際して場所を反復して提供する行為は、それぞれ独立した構成要件に該当し、一連の行為として一罪を構成するものではない。
重要事実
料理店を経営する被告人が、雇用した仲居との間で対償を分配する約束のもと、売春をさせることを内容とする契約を締結した。その後、実際の売春に際して、多数回にわたり反復して料理店の客室を売春の場所として提供した。
あてはめ
被告人が仲居と対償分配の約束で売春契約を締結した行為は、売春をさせる契約の罪を構成する。これに加え、当該契約に基づき客室を多数回反復して提供した行為は、場所提供を業としたものとして場所提供の罪を構成する。両者は行為の態様および保護法益の侵害状況において区別されるべき独立の行為といえるため、刑法45条前段の併合罪として処理されるのが相当である。
結論
売春防止法10条1項違反の罪と、同法11条2項違反の罪が成立し、これらは併合罪となる。
実務上の射程
売春防止法における各処罰規定の独立性を認める判断である。先行する契約行為にその後の場所提供行為が吸収されることはなく、営業として場所を提供している実態がある場合には、契約締結罪とは別に場所提供罪が成立することを明確にした点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和38(あ)2490 / 裁判年月日: 昭和39年2月8日 / 結論: 棄却
旅館を経営する者が、多数回にわたり反覆してその客室を売春のために提供している場合には、売春場所提供の対価又は売春報酬の一部を取得した事実がなくても、売春防止法第一一条第二項の「売春を行う場所を提供することを業とした者」にあたる。