「犯罪事実に加わつていない被告人を、共謀共同正犯の理論により有罪とした原判決(破棄自判)は、罪刑法定主義を規定した憲法三一条に違反する」との主張を単なる法令違反の主張として処理された事例
憲法31条,刑法60条
判旨
共犯者の自白のみによって犯罪事実を認定することは憲法38条3項に違反するが、他の証拠が存在する場合には同条項違反とはならない。
問題の所在(論点)
憲法38条3項が規定する「本人の自白」に共犯者の自白が含まれるか、また、共犯者の自白以外の証拠が存在する場合に同条項違反となるか。
規範
憲法38条3項が「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定する趣旨に鑑み、被告人の有罪認定に際しては、自白以外の補強証拠を要する。もっとも、原判決が犯罪事実の認定にあたり、共犯者の自白のみによらず、他の証拠をも総合して判断している場合には、同条項に違反するものではない。
重要事実
被告人AおよびBは、刑事裁判において犯罪事実を認定されたが、これに対し被告人Bの弁護人は、原判決が共犯者の自白のみによって犯罪事実を認定したものであり、憲法38条3項に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人Bの弁護人は、犯罪事実が共犯者の自白のみで認定されたと主張する。しかし、原判決の判文を検討すると、犯罪事実の認定は共犯者の自白のみによって行われたものではないことが明白である。したがって、自白以外の証拠が存在する以上、憲法38条3項違反をいう主張はその前提を欠いているといえる。
事件番号: 昭和36(あ)2955 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
(裁判官田中二郎の反対意見)憲法第三八条第三項にいう自白の中には共犯者の自白をも含むものと解するを相当とする。
結論
本件各上告を棄却する。原判決が共犯者の自白のみによって犯罪事実を認定したものではない以上、憲法38条3項違反には当たらない。
実務上の射程
共犯者の自白に補強証拠が必要かという論点(憲法38条3項・刑訴法319条2項)において、判例(最大判昭23.5.28等)は共犯者の自白は「本人の自白」に含まれないとする。本判決もその流れを汲み、共犯者の自白以外の証拠が存在すれば憲法違反の問題は生じないことを確認している。答案上は、補強証拠の要否を検討する際の反対利益の排除、あるいは補強証拠の存在を確認する文脈で使用する。
事件番号: 昭和28(あ)3174 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項の「本人の自白」以外の補強証拠については、その証明力を争うことは事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審において有罪判決を受けた。その認定資料として、被告人の司法警察員に対する自白調書のほか、複数の証拠が挙示されていた。被告人側は、こ…
事件番号: 昭和26(れ)1305 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には当たらない。したがって、公判廷における自白のみに基づいて有罪判決を下しても、同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は刑事事件において懲役1年に処せられた。被告人側は、原審が被告人の公判廷での自白のみを証拠…