判旨
既に確定した裁判の公訴事実と全く同一の事実について、重ねて起訴がなされ有罪判決が確定した場合、後になされた裁判は憲法39条の一事不再理の原則に反し、刑訴法337条1号により免訴すべき違法なものである。
問題の所在(論点)
確定判決がある事案と全く同一の事実について、後から重ねてなされた有罪判決の効力(刑訴法337条1号の免訴事由の該否)。
規範
憲法39条は「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」と規定し、刑事訴訟法337条1号は、確定判決を経たときは判決で免訴を言い渡すべき旨を定めている。これら一事不再理の原則及び既判力の効力により、既に確定した裁判と同一の公訴事実について再度起訴がなされた場合には、裁判所は実体審理をすることなく免訴を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人は、昭和38年1月20日の無免許運転の事実につき、同年2月13日に罰金6,000円の即決裁判が確定した。しかし、その後、被告人は同一の無免許運転の事実(時間は15分、場所は数百メートルの差異はあるが同一の運転行為と認められるもの)及び重過失傷害の事実について重ねて略式命令の請求を受け、同年8月20日に罰金40,000円の略式命令が確定した。この後者の略式命令につき、検事総長が非常上告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件における二個の道路交通法違反の公訴事実は、記録を精査すると全く同一の事実であると認められる。そうであれば、後の起訴を受けた裁判所は、既に同一事実につき確定した即決裁判が存在することから、刑訴法463条により通常規定に従い審理した上で、道路交通法違反については刑訴法337条1号に基づき免訴を言い渡し、重過失傷害罪についてのみ有罪を言い渡すべきであった。しかるに、同一事実につき二重に有罪認定をした原略式命令は、一事不再理の原則に反し、被告人に不利益な違法があるといえる。
結論
原略式命令を破棄し、道路交通法違反の事実については免訴、重過失傷害の事実についてのみ罰金34,000円に処する。
事件番号: 昭和48(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年4月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令と同一の事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、後になされた略式命令は刑事訴訟法337条1号に該当し、免訴の裁判をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和46年4月1日の無免許運転の事実につき、同年6月24日に略式命令を受け、同年7月13日に確定した。しかし、検察官は…
実務上の射程
同一事実かどうかの判断は、公訴事実の記載(時間・場所)に多少の差異があっても、実態として一連の行為と認められるかにより決せられる。答案上、一事不再理の効力が及ぶ範囲(既判力の客観的範囲)が問題となる場面で、実体的同一性が認められれば免訴(337条1号)となる根拠として引用する。
事件番号: 昭和39(さ)6 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】確定判決がある事件と同一の犯罪事実について重ねて略式命令が発せられた場合、一事不再理の原則に基づき、刑事訴訟法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反の罪により、昭和39年2月1日付の略式命令を受け、同年2月21日にこれが確定した。しかし、同一の犯罪…