判旨
一連の運転行為において、一方の公訴事実が故意犯、他方が過失犯とされ、かつ犯罪場所の記載に相違があったとしても、犯罪の日時及び車両が同一である場合には「同一事実」にあたる。したがって、既に確定判決がある場合には刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
一連の運転行為につき、一方を故意犯、他方を過失犯として起訴し、かつ場所的記載に若干の相違がある場合、それらは刑訴法337条1号にいう「確定判決を経た」後の「同一事実」にあたるか。
規範
公訴事実が「同一事実」(刑訴法337条1号)にあたるか否かは、事案の自然的・基礎的事実関係が同一であるかによって判断される。罪名、主観的態様(故意・過失の別)、または細部における場所的記載の相違があっても、犯行の日時、行為の主体、及び行為の対象(車両等)が同一であり、社会通念上一個の行為と評価される場合には、二重処罰の禁止の観点から同一事実として扱われる。
重要事実
被告人は、昭和37年7月15日11時15分頃、軽自動車を無携帯運転したという故意犯の事実について、同年8月に略式命令を受け確定した。その後、同一日時・同一車両の運転について、過失による無携帯運転であるとの事実で、場所の表示を一部異にした状態で再度略式命令の請求がなされ、再び罰金刑の略式命令が発せられ確定した。検事総長は、これが二重処罰にあたるとして非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件における二つの犯罪事実は、一方が故意犯で他方が過失犯であり、犯罪場所の記載にも相違がある。しかし、犯罪の日時(昭和37年7月15日11時15分頃)および被告人が運転した自動車(軽自動車B号)は全く同一である。これらの事実に鑑みれば、場所や主観的態様の構成に差異があっても、結局において同一の運転行為を対象とするものである。したがって、後になされた略式命令は、既に確定した前者の略式命令と同一事実について重ねて処罰を科したものであると認められる。
結論
本件公訴事実は既に確定判決を経た同一事実であるため、裁判所は刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきであった。二重処罰を課した原略式命令は違法であるため破棄し、免訴を言い渡す。
実務上の射程
「公訴事実の同一性」の判断において、自然的・基礎的事実の核となる要素(日時・場所・対象物)が重なる場合、法的評価(故意・過失)や細部の記載に拘泥せず一事不再理効を認める実務上の指針となる。非常上告の場面だけでなく、公訴棄却や免訴の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和39(さ)6 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】確定判決がある事件と同一の犯罪事実について重ねて略式命令が発せられた場合、一事不再理の原則に基づき、刑事訴訟法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反の罪により、昭和39年2月1日付の略式命令を受け、同年2月21日にこれが確定した。しかし、同一の犯罪…
事件番号: 昭和39(さ)2 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判の公訴事実と全く同一の事実について、重ねて起訴がなされ有罪判決が確定した場合、後になされた裁判は憲法39条の一事不再理の原則に反し、刑訴法337条1号により免訴すべき違法なものである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年1月20日の無免許運転の事実につき、同年2月13日に罰金6…
事件番号: 昭和43(さ)2 / 裁判年月日: 昭和43年10月15日 / 結論: その他
各一個の窃盗および道路交通法違反(無免許運転)の併合罪につき、原判決が懲役刑および罰金刑を併科している場合において、道路交通法違反の罪についての非常上告に理由があるときは、原判決中罰金刑の部分のみを破棄すれば足りる。