各一個の窃盗および道路交通法違反(無免許運転)の併合罪につき、原判決が懲役刑および罰金刑を併科している場合において、道路交通法違反の罪についての非常上告に理由があるときは、原判決中罰金刑の部分のみを破棄すれば足りる。
併合罪の一部についての非常上告と破棄の範囲
刑法45条前段,刑法48条1項本文,刑訴法458条
判旨
略式命令の確定後に同一の公訴事実について公判請求に基づく有罪判決がなされた場合、当該事実は既に確定判決を経たものとして刑事訴訟法337条1号に基づき免訴すべきである。同一事件につき重ねて有罪の裁判をすることは重大な法令違反であり、非常上告により破棄されるべき事由となる。
問題の所在(論点)
同一の公訴事実について略式命令が先行して確定している場合に、後からなされた公判請求に基づく有罪判決の効力、および免訴(刑事訴訟法337条1号)の該否が問題となる。
規範
刑事訴訟法337条1号にいう「確定判決を経たとき」とは、略式命令を含め、同一の公訴事実について既に有罪または無罪の裁判が確定している場合を指す。また、複数の事実が併合罪として処理されている場合でも、可分な一部の事実について確定判決が存在するときは、当該事実についてのみ免訴を言い渡すべきである。
重要事実
被告人は無免許運転の事実について、1967年3月3日に他の窃盗罪と共に公判請求を受け、同年6月9日に懲役10月(執行猶予3年)および罰金1万5000円の判決を受けた(6月24日確定)。しかし、これに先立つ4月18日、同一の無免許運転の事実について別途略式命令が請求され、同日、罰金2万円の略式命令が発せられて5月3日に確定していた。すなわち、公判請求にかかる本件判決時において、同一事実は既に略式命令により確定していた。
事件番号: 昭和42(さ)3 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、確定判決があるときに該当し、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転の事実により昭和41年8月4日に罰金1万円の略式命令を受け、同年9月17日に確定した。しかし、その後検察官は…
あてはめ
本件における公判請求の事実(無免許運転)と先行する略式命令の事実は、時間は多少異なるものの、場所および内容において全く同一であり、同一の公訴事実であると認められる。原裁判(公判請求分)の判決当時において、当該事実は既に略式命令により確定していたのであるから、裁判所は刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきであった。これを看過して有罪判決を下したことは、被告人に重ねて刑罰を科す不利益な違法である。
結論
原判決のうち、既に確定判決を経たものと認められる道路交通法違反(無免許運転)の事実に係る罰金刑部分を破棄し、同事実について免訴を言い渡す。
実務上の射程
二重処罰禁止(一事不再理効)の基本判例である。略式命令であっても公判手続による判決と同様に確定判決としての効力を有し、その後に同一事実を裁くことはできない。答案上は、免訴事由の存否を確認する際、確定判決の範囲(同一性)と時点的前後関係を認定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和41(さ)2 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察…
事件番号: 昭和41(さ)1 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判と同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該後の裁判は刑事訴訟法337条1号に違反する。このような二重の確定裁判が生じた事態は、被告人の不利益が明らかであるため、非常上告の手続により原判決を破棄し、免訴を言い渡すべきである。 第1 事案…
事件番号: 昭和60(さ)1 / 裁判年月日: 昭和60年10月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、その審判は法令に違反するため、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和58年2月21日の道路交通法違反(一時停止無視)の事実について、同年3月9日付の公訴提起に基づき略式命令を…
事件番号: 昭和48(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年4月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令と同一の事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、後になされた略式命令は刑事訴訟法337条1号に該当し、免訴の裁判をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和46年4月1日の無免許運転の事実につき、同年6月24日に略式命令を受け、同年7月13日に確定した。しかし、検察官は…