判旨
既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。
問題の所在(論点)
同一の公訴事実について既に略式命令が確定しているにもかかわらず、重ねて公訴提起がなされ裁判が確定した場合、裁判所はいかなる措置を講ずべきか。刑事訴訟法337条1号(免訴)の適用の成否が問題となる。
規範
確定判決があるときは、判決で免訴の言渡しをしなければならない(刑事訴訟法337条1号)。この「確定判決」には、確定した略式命令も含まれ、これに反してなされた二重の公訴提起及び裁判は違法であり、被告人の不利益として破棄の対象となる。
重要事実
被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察官は同一の公訴事実について再度略式命令を請求し、札幌簡易裁判所はこれを看過して昭和39年10月28日に同一内容の略式命令を発し、同年11月15日に確定した。
あてはめ
本件において、被告人は昭和38年に無免許運転の事実で既に略式命令を受け、これが確定している。これと「同一の事実」につき、昭和39年になされた二度目の公訴提起および略式命令は、一事不理再理の原則に反するものである。裁判所は、後の公訴提起にかかる事実が既に確定判決を経たものであることを確認し、実体審理に入ることなく形式裁判によって手続を打ち切るべきであった。したがって、後の略式命令は同法337条1号を適用せずになされた実体判断として違法である。
結論
確定した略式命令と同一事実について重ねてなされた略式命令は違法である。よって、非常上告に基づき後の略式命令を破棄し、被告人に対し免訴を言い渡す。
事件番号: 昭和41(さ)1 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判と同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該後の裁判は刑事訴訟法337条1号に違反する。このような二重の確定裁判が生じた事態は、被告人の不利益が明らかであるため、非常上告の手続により原判決を破棄し、免訴を言い渡すべきである。 第1 事案…
実務上の射程
略式命令が確定判決としての既判力(一事不理再理の効力)を有することを明示した事例である。答案上は、一事不理再理の原則や二重処罰の禁止を論じる際の前提として、略式命令の確定が「確定判決」に該当することを示すために活用できる。
事件番号: 昭和42(さ)3 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、確定判決があるときに該当し、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転の事実により昭和41年8月4日に罰金1万円の略式命令を受け、同年9月17日に確定した。しかし、その後検察官は…
事件番号: 昭和60(さ)1 / 裁判年月日: 昭和60年10月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、その審判は法令に違反するため、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和58年2月21日の道路交通法違反(一時停止無視)の事実について、同年3月9日付の公訴提起に基づき略式命令を…
事件番号: 昭和48(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年4月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令と同一の事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、後になされた略式命令は刑事訴訟法337条1号に該当し、免訴の裁判をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和46年4月1日の無免許運転の事実につき、同年6月24日に略式命令を受け、同年7月13日に確定した。しかし、検察官は…