判旨
既に確定した裁判と同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該後の裁判は刑事訴訟法337条1号に違反する。このような二重の確定裁判が生じた事態は、被告人の不利益が明らかであるため、非常上告の手続により原判決を破棄し、免訴を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
確定した略式命令がある事件と同一の犯罪事実について、重ねて公訴提起がなされ略式命令が確定した場合における、後位の裁判の効力および救済手段が問題となる。
規範
確定判決を経た事件について再度公訴が提起された場合には、刑事訴訟法337条1号(一事不再理の原則)により、判決をもって免訴を言い渡さなければならない。既に確定した略式命令が存在する事実と同一の事実について、後になされた略式命令が確定した場合には、当該後の裁判は法令違反であり、かつ被告人に不利益であるといえる(同法458条1号)。
重要事実
被告人は、昭和40年2月19日の無免許運転の事実につき、同年4月28日に罰金5,000円の略式命令を受け、5月21日に確定した。ところが、被告人は右裁判の確定後、同一事実について再度公訴提起・略式命令の請求を受け、7月28日に同額の略式命令がなされ、8月22日に確定した。これにより、同一の犯罪事実について二個の略式命令が確定する事態が生じた。
あてはめ
本件における後の公訴事実は、先行する4月28日付の略式命令において既に確定判決を経ている事実と同一である。裁判所は刑事訴訟法337条1号に基づき、後位の提訴に対しては免訴の言渡しをすべきであった。それにもかかわらず略式命令を発して確定させたことは、法令に違反するものである。また、同一事実について二重の処罰(罰金刑)を課す結果となっていることは、被告人にとって不利益であることが明らかである。
結論
後になされた原略式命令は違法である。よって、非常上告に基づき原略式命令を破棄し、刑事訴訟法337条1号により被告人を免訴する。
事件番号: 昭和41(さ)2 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察…
実務上の射程
一事不再理(337条1号)が形式的な確定判決のみならず、略式命令の確定にも及ぶことを当然の前提としている。実務上、同一事実に対する二重起訴・二重処罰の瑕疵を是正するための非常上告の典型的な事案として位置づけられる。答案上は、既判力の及ぶ範囲や一事不再理の効果を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和42(さ)3 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、確定判決があるときに該当し、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転の事実により昭和41年8月4日に罰金1万円の略式命令を受け、同年9月17日に確定した。しかし、その後検察官は…
事件番号: 昭和48(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年4月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令と同一の事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、後になされた略式命令は刑事訴訟法337条1号に該当し、免訴の裁判をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和46年4月1日の無免許運転の事実につき、同年6月24日に略式命令を受け、同年7月13日に確定した。しかし、検察官は…
事件番号: 昭和60(さ)1 / 裁判年月日: 昭和60年10月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、その審判は法令に違反するため、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和58年2月21日の道路交通法違反(一時停止無視)の事実について、同年3月9日付の公訴提起に基づき略式命令を…