判旨
既に公訴が提起されている事件について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法338条3号に基づき判決で公訴を棄却すべきであり、これに反して二重に略式命令を発し確定させた後になされた裁判は違法である。
問題の所在(論点)
同一の犯罪事実について二重に公訴が提起され、裁判所がこれを見落として実体裁判(略式命令)を重ねて行い確定させた場合、後になされた裁判の効力はどうなるか。刑事訴訟法338条3号の適用の可否が問題となる。
規範
既に公訴提起がなされた同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起された場合(二重起訴)、裁判所は実体判決をすることなく、刑事訴訟法338条3号により、判決をもって公訴を棄却しなければならない。
重要事実
被告人は、昭和37年3月11日の無免許運転の事実につき、同年4月28日に公訴提起(略式請求)を受け、同年5月2日に罰金4000円の略式命令を受けた。しかし、当該裁判の確定前である同年5月23日、検察官は同一の無免許運転の事実に速度超過の事実を併合し、再び公訴提起(略式請求)を行った。裁判所は、後の公訴に対しても同年5月25日に罰金9000円の略式命令をなし、各裁判はいずれも同年6月14日に確定した。
あてはめ
本件では、前後の公訴事実に含まれる無免許運転の事実は全く同一である。裁判所は、後の公訴提起を受けた際、無免許運転の事実については刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであった。それにもかかわらず、裁判所は後の公訴についても有罪の略式命令を発しており、同一事実について二個の略式命令が確定する事態を招いた。したがって、後になされた略式命令は同条に違反する違法なものであり、被告人に不利益であることは明らかである。
結論
後になされた略式命令は違法であるため破棄を免れない。二重起訴となった無免許運転の事実については公訴を棄却し、併合された他の事実についてのみ有罪(罰金)とする。
実務上の射程
二重起訴の禁止(刑訴法338条3号)の原則を確認した事例である。実務上、略式手続においても二重起訴の有無は厳格に判断され、看過されたまま確定した場合は非常上告等の対象となり得る。答案上は、公訴提起の効力が及ぶ範囲(公訴事実の同一性)を検討し、二重起訴に該当する場合の裁判所の措置を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(さ)11 / 裁判年月日: 昭和39年3月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪事実について複数の公訴が提起され、一方が先に確定した場合には、他方の裁判は確定判決を経た事件に対するものとなり、刑事訴訟法337条1号により免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和36年7月20日の無免許運転の事実に関し、同年9月25日に略式命令を請求され、同年10月19日に罰…