判旨
同一の犯罪事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであり、これを看過してなされた略式命令は違法として破棄される。
問題の所在(論点)
同一の犯罪事実について二重に公訴が提起され、それぞれについて略式命令が発せられて確定した場合、後になされた略式命令の法的効力はどうあるべきか。刑事訴訟法338条3号(二重起訴の禁止)の適用が問題となる。
規範
同一事件について重ねて公訴が提起された場合には、刑事訴訟法338条3号により、判決で公訴を棄却しなければならない。二重起訴の禁止に反する公訴提起は、手続規定に違反する無効なものとして排斥されるべきである。
重要事実
被告人は、普通貨物自動車の無免許運転を教唆したという道路交通取締法違反の事実につき、昭和33年2月28日に略式命令を請求され、同年4月8日付で罰金2,000円の略式命令を受け、同年5月7日に確定した。しかし、これと全く同一の事実につき、同年3月22日に再び略式命令の請求がなされ、裁判所は前件の存在を看過したまま、同年4月21日付で重ねて罰金2,000円の略式命令を発し、これも同年5月24日に確定した。この後者の略式命令に対し、検事総長が非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、後に行われた略式命令請求の対象となった事実は、既に先行する略式命令請求の対象となっていた事実と同一である。裁判所は、後の請求については刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであった。これを看過して重ねて罰金刑に処する略式命令を発したことは、明らかな法令違反であり、かつ、被告人に対して二重の刑罰を科すものであって不利益であるといえる。
結論
後の略式命令は違法であるため、刑事訴訟法458条1号によりこれを破棄し、刑事訴訟法338条3号を適用して公訴を棄却する。
実務上の射程
二重起訴の禁止が略式手続においても厳格に適用されることを示した。実務上、同一事実に対する重複起訴を見逃して確定した裁判は、非常上告の対象となり、公訴棄却によって是正されるべきであることを裏付ける。答案上は、一事不再理効(337条1号)が生じる前であっても、係属中の別訴がある場合には338条3号により公訴棄却すべき根拠として活用できる。
事件番号: 昭和41(さ)11 / 裁判年月日: 昭和41年11月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであり、これを看過してなされた略式命令は違法として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は昭和39年7月3日の無免許運転および追い越し禁止違反の事実につき、昭和40年2月12日に略式命令を…