判旨
同一の犯罪事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであり、これを看過してなされた略式命令は違法として破棄される。
問題の所在(論点)
既に公訴が提起されている事件と同一の事実について、重ねて公訴が提起された場合に、裁判所が採るべき措置および、これを看過してなされた裁判の効力が問題となる(二重起訴の禁止、刑訴法338条3号)。
規範
公訴の提起があった事件について、さらに同一裁判所に公訴が提起されたときは、刑事訴訟法338条3号に基づき、判決で公訴を棄却しなければならない。二重起訴の禁止に触れる場合、実体審理に入ることなく形式裁判によって訴訟を終結させるべきである。
重要事実
被告人は昭和39年7月3日の無免許運転および追い越し禁止違反の事実につき、昭和40年2月12日に略式命令を請求され、同年3月10日に罰金11,000円の略式命令を受けた。しかし、検察官は同年2月24日、右と同一の犯罪事実(日時の誤記を含む)について再び同一裁判所に略式命令を請求した。裁判所は、先の略式命令が確定する前の同年3月23日、後になされた請求に対しても重ねて罰金11,000円の略式命令を発し、後に確定した。
あてはめ
本件において、二度目の略式命令請求(2月24日付)に係る犯罪事実は、既に請求されている一度目の事実と全く同一である。したがって、本件は「公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき」(刑訴法338条3号)に該当する。裁判所は、後順位の請求に対して公訴棄却の判決をなすべきであったにもかかわらず、これを看過して重ねて実体的な罰金刑を科す略式命令を発したことは、法令の適用を誤った違法な裁判であり、かつ被告人に二重の刑罰を科す不利益を生じさせている。
結論
後になされた略式命令は違法である。よって、非常上告に基づき、当該略式命令を破棄し、改めて刑事訴訟法338条3号により公訴を棄却する。
実務上の射程
二重起訴がなされた場合の処理を明示した基本判例である。答案上では、一事不再理効(337条1号)が発生する前の段階における公訴提起の適否が問題となる場面で、刑訴法338条3号を根拠として公訴棄却の結論を導くために用いる。
事件番号: 昭和41(さ)10 / 裁判年月日: 昭和41年11月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】同一犯罪事実について二重に公訴が提起された場合、後になされた公訴提起は刑事訴訟法338条3号により判決で棄却すべきであり、これに反してなされた略式命令は違法として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和39年6月14日の無免許運転の事実に関し、同年10月21日に公訴提起(略式命令請求)を受け…