二重処罰(略式命令)に対する非常上告
刑訴法458条1号
判旨
同一の裁判所に公訴が提起された事件について、更に同一事実に基づき公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法463条1項により通常手続に移した上で、同法338条3号により公訴棄却の判決をすべきである。
問題の所在(論点)
同一裁判所に同一事実について公訴が二重に提起された場合(二重起訴)、裁判所はいかなる措置を講じるべきか。また、略式命令が発せられた後にこの事態が判明した場合、非常上告の対象となるか。
規範
公訴の提起があった事件について、さらに同一裁判所に公訴が提起された場合(二重起訴)には、刑事訴訟法338条3号に基づき、公訴棄却の判決を言い渡さなければならない。この際、略式命令が請求されている場合には、同法463条1項により通常の審判手続に移行させた上で、右判決を行うべきである。
重要事実
被告人の道路交通法違反の事実(無免許運転)に関し、富山簡易裁判所に昭和51年6月9日付で略式命令の請求がなされた(第一事件)。ところが、同一事実について同年6月17日付で、再び同裁判所に略式命令の請求がなされた(第二事件)。同裁判所は、第二事件について同年6月18日に略式命令を発し、これが確定した。さらに、第一事件についても同年6月18日に同一内容の略式命令を発し、これも後に確定した。このように、同一裁判所に同一事実の公訴が二重に提起され、それぞれについて略式命令が発せられる事態が生じた。
あてはめ
本件では、昭和51年6月17日付の公訴提起(第二事件)の時点で、既に同一の被告人かつ同一の事実について、6月9日付の公訴(第一事件)が同裁判所に係属していた。したがって、第二事件の公訴提起は「公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき」(刑訴法338条3号)に該当する。それにもかかわらず、裁判所が通常手続への移行(刑訴法463条1項)をせず、実体的な判断である略式命令を発したことは、法令に違反するものである。また、この略式命令は被告人に対して二重の罰金刑を科すものであり、被告人の不利益になることが明らかである。
結論
本件第二事件の略式命令は、二重起訴を看過してなされた法令違反の裁判である。よって、非常上告に基づき原略式命令を破棄し、刑事訴訟法338条3号により公訴を棄却する。
実務上の射程
二重起訴(刑訴法338条3号)の典型的事案。略式命令が先行して確定したとしても、同一裁判所に係属した前後関係に基づき、後に提起された公訴は不適法として棄却すべきことを示している。実務上、略式手続であっても二重起訴の有無を精査する義務が裁判所にあることを確認するものである。
事件番号: 昭和41(さ)10 / 裁判年月日: 昭和41年11月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】同一犯罪事実について二重に公訴が提起された場合、後になされた公訴提起は刑事訴訟法338条3号により判決で棄却すべきであり、これに反してなされた略式命令は違法として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和39年6月14日の無免許運転の事実に関し、同年10月21日に公訴提起(略式命令請求)を受け…