一 原判決の公職選挙法第一四二条第一項、第一四六条第一項にいわゆる頒布に対する判示解釈は正当である(昭和三五年(あ)第一五一一号同三六年三月三日第二小法廷判決、刑集第一五巻三号四七七頁参照)。 二 (原判示解釈の要旨)公職選挙法第一四六条第一項の頒布、同法第一四二条第一項の頒布とは多数人に配布することをいい、その多数人が不特定であることを要しない。
公職選挙法第一四二条第一項、第一四六条第一項にいわゆる頒布の解釈。
公職選挙法142条1項,公職選挙法146条1項,公職選挙法243条3号,公職選挙法243条5号
判旨
公職選挙法142条1項及び146条1項にいう文書図画の「頒布」とは、不特定又は多数の者に配布することをいい、必ずしも直接これに交付することを要せず、配布の目的をもって一箇所に備え置く行為も含まれる。
問題の所在(論点)
公職選挙法142条1項(通常葉書等の頒布制限)及び146条1項(文書図画の頒布禁止)にいう「頒布」の意義、とりわけ直接の交付を伴わない備置きがこれに含まれるか否かが問題となる。
規範
公職選挙法142条1項及び146条1項に規定される「頒布」とは、不特定又は多数の者に文書図画を配布することを意味する。これには、直接相手方に交付する行為のみならず、不特定又は多数の者が受領し得る状態に置く行為、すなわち配布の目的で一箇所に集中的に備え置く行為も含まれると解するのが相当である。
重要事実
本件において被告人が行った具体的な行為の詳細は判決文からは不明であるが、原審が公職選挙法142条1項及び146条1項にいう「頒布」に該当すると判断した事実関係が存在する。被告人は、当該判断に法令違反があるとして上告したものである。
あてはめ
最高裁判所は、昭和36年3月3日第二小法廷判決を引用し、原判決の「頒布」に関する解釈を正当とした。これにより、公職選挙法上の「頒布」は、直接手渡しする行為に限定されず、広く不特定多数に配布する目的をもってなされる客観的な提供態様を包含すると解される。本件における具体的な態様が備置き等であったとしても、それが不特定多数への配布を目的としている以上、同法の禁止する「頒布」に該当すると評価される。
結論
被告人の行為は、公職選挙法142条1項及び146条1項にいう文書図画の「頒布」に該当し、原判決の判断に法令違反はない。
実務上の射程
選挙運動の公正を期するための文書図画規制に関する基本判例である。答案上は、直接の交付がない事案(例:店先に置く、街頭に積み上げる等)において「頒布」の該当性を検討する際の規範として活用できる。定義として「不特定又は多数の者に配布すること」を明示した上で、態様を問わない趣旨を論述すべきである。
事件番号: 昭和36(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
一 被告人の本件所為をもつて法定外文書の頒布に当るとした原判示は正当である。 (原判決の要旨) 二 本件文書(何れもビラ)は横約四〇糎、縦約一二〇糎の白地の洋紙に「期必勝A」と墨書(但し◎及びふりがなは朱書)したもので、文書の外形、内容自体(特に候補者の姓名にふりがなまで附して表示している点)からみて選挙運動に使用する…