公職選挙法第一四六条第一項にいう文書図画の頒布には、対価を得てこれを配布する場合をも含む。
公職選挙法第一四六条第一項の頒布の意義。
公職選挙法142条,公職選挙法146条1項,公職選挙法243条5号
判旨
公職選挙法146条1項にいう文書図画の「頒布」には、有償で販売する場合も含まれる。また、選挙運動としての戸別訪問の禁止や文書図画の頒布規制は憲法21条等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法146条1項および243条5号に規定される「文書図画の頒布」という文言に、文書を販売する行為が含まれるか。また、戸別訪問や文書図画の頒布規制が憲法に違反するか。
規範
公職選挙法146条1項および243条5号における文書図画の「頒布」とは、不特定または多数の者に対して文書図画を配付することを指し、無償・有償を問わない。したがって、相手方の納得の下に相当の対価を得て配付される「販売」行為も、同条にいう頒布の概念に包含される。
重要事実
被告人らは、選挙運動に関し、公職選挙法により制限されている文書図画(詳細は判決文からは不明)を、相当の対価を得て第三者に販売し、配付した。弁護側は、同法146条1項にいう「頒布」は無償譲渡に限られ、販売行為はこれに含まれないと主張して上告した。
あてはめ
頒布の趣旨は、選挙の公正を確保するために文書図画による不当な影響を排除することにある。有償の販売であっても、不特定多数に文書が行き渡る点は無償配布と異ならず、選挙の公正を害する危険性は同様に認められる。したがって、原審が「相手方の納得の下に相当の対価を得て配付される場合を含む」とした判断は正当である。また、戸別訪問や文書頒布の規制については、これまでの最高裁大法廷判決の趣旨に照らし、憲法違反には当たらない。
結論
公職選挙法上の文書図画の頒布には販売行為も含まれる。したがって、被告人らの行為は同法違反に該当し、かつ当該規制は憲法に違反しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
「頒布」の解釈に関する重要な先例であり、有償・無償を問わず広く配付行為を規制対象とする実務運用を支える。答案上は、公選法違反の構成要件解釈において、形式的な「販売」であっても実質的に頒布に当たることを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和60(あ)299 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法146条1項による文書図画の頒布制限及び同法243条5号による罰則規定は、選挙の公正を確保するための合理的かつ必要最小限度の制限であり、憲法21条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、公職選挙法146条1項(昭和57年改正前)により禁止されている「選挙の公正を害するおそれのあ…