公職選挙法一四六条一項、二四三条五号(昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)と憲法一一条ないし一五条、二一条、三一条(補足意見がある)
公選法146条1項,公選法243条5号,憲法ないし15条,憲法ないし21条,憲法ないし31条
判旨
公職選挙法146条1項による文書図画の頒布制限及び同法243条5号による罰則規定は、選挙の公正を確保するための合理的かつ必要最小限度の制限であり、憲法21条等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法146条1項が定める選挙に関する文書図画の頒布制限および同法243条5号の罰則規定が、憲法21条1項等の表現の自由および参政権の保障を侵害し、違憲ではないか。
規範
表現の自由を保障する憲法21条1項といえども絶対無制限ではなく、公共の福祉による制限を免れない。選挙の公正を確保し、不当な財力の影響を排して候補者間の実質的平等を維持し、有権者が自由な意思で投票を行うことを保障するという目的は正当である。そのため、かかる目的達成のために必要かつ合理的な範囲内での文書図画の頒布制限は、憲法に抵触しない。
重要事実
被告人両名は、公職選挙法146条1項(昭和57年改正前)により禁止されている「選挙の公正を害するおそれのある方法」による文書図画を頒布したとして、同法243条5号に基づき処罰された。被告人側は、かかる頒布制限が政治的表現の自由を侵害し、憲法11条ないし15条、21条、31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和30年3月30日判決等)を引用し、公職選挙法の頒布制限規定が憲法に違反しないことは明らかであると判断した。伊藤正己裁判官の補足意見によれば、文書図画の頒布は一度に行われる量や範囲が広範になりやすく、選挙の公正を著しく乱すおそれがあるため、その態様を制限することは合理的とされる。本件の規定も、選挙の自由と公正を確保するという重要な公共の利益を達成するための手段として、必要最小限度の制約にとどまるものといえる。
結論
公職選挙法146条1項、243条5号の規定は、憲法21条等に違反しない。したがって、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制約を合憲とした典型的な判例である。答案上は、表現の自由を制約する目的の正当性と、手段の合理性・必要性(いわゆる「二重の基準」や「合憲性判定基準」)の文脈で、選挙の公正確保という公益による合理的制約の限界を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1207 / 裁判年月日: 昭和30年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法146条による文書図画の頒布制限は、憲法21条に違反しない。先行する大法廷判決の判断を維持し、選挙の公正を確保するための合理的制限として合憲性を肯定した。 第1 事案の概要:被告人らが、公職選挙法146条(現行の選挙運動用以外の文書図画の頒布制限規定に相当)に抵触する態様で文書図画を頒布…