論旨は、公職選挙法一四六条は憲法二一条に違反して無効であると主張する。しかし、憲法二一条は言論出版等の自由を絶対無制限に保障しているものではなく、公共の福祉のため必要ある場合には、その時、所、方法等につき合理的制限のおのずらから存するものであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)第二五九一号、同二五年九月二七日大法廷判決参照)。そして公職選挙法一四六条は、公職の選挙につき文書図画の無制限の頒布、提示を認めるときは、選挙運動に不当の競争を招き、これが為却つて選挙の自由公正を害し、その公明を保持し難い結果を来たすおそれがあると認めて、かかる弊害を防止する為、選挙運動期間中を限り、文書図画の頒布、掲示につき一定の規正をしたのであつて、この程度の規制は、公共の福祉のため、憲法上許された必要且つ合理的の制限と解することができる。それ故、所論は理由がない。
公職選挙法第一四六条の合憲性
公職選挙法146条,憲法21条
判旨
公職選挙法による文書図画の頒布・掲示の制限は、選挙の自由公正を確保し、不当な競争による弊害を防止するために必要かつ合理的な範囲内のものであり、憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法146条(現行法上の文書図画の頒布等の制限に関連)による選挙運動の規制が、憲法21条1項の保障する表現の自由を不当に侵害し違憲となるか。
規範
憲法21条の保障する表現の自由は絶対無制限ではなく、公共の福祉のため必要がある場合には、その時・所・方法等につき合理的制限に服する。選挙運動の規制については、不当な競争を防ぎ選挙の自由公正を確保するという目的のために、必要かつ合理的な範囲内であれば、その制限は許容される。
重要事実
被告人が、公職選挙法146条が定める選挙運動期間中の文書図画の頒布・掲示の制限に違反する行為を行ったとして起訴された事案。弁護人は、当該規定が言論出版の自由を保障する憲法21条に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
公職選挙法146条の目的は、文書図画の無制限な頒布等を認めると選挙運動に不当な競争を招き、かえって選挙の自由公正を害するおそれがあるため、その弊害を防止することにある。本規定は、選挙運動期間中に限り文書図画の頒布・掲示に一定の規制を課すものであるが、これは選挙の公明を保持するために必要かつ合理的な制限といえる。したがって、公共の福祉に基づく適切な制約の範囲に留まっていると判断される。
結論
公職選挙法146条は憲法21条に違反しない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限の合憲性を肯定した初期の重要判例である。答案上では、戸別訪問禁止や文書図画規制の合憲性を論じる際、目的の正当性(選挙の自由公正)と手段の合理性に依拠する判例の基本的立場を示すために活用できる。ただし、現代の答案作成においては、より詳細な審査基準(目的・手段審査)を立てた上で、本判例の趣旨を引用しつつ、規制の必要性と表現の自由の重要性を比較考量する論法が一般的である。
事件番号: 昭和30(あ)712 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法142条による文書頒布制限は、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らが、公職選挙法142条で禁止されている態様により、選挙運動のための文書を頒布したとして、同法243条3号に基づき処罰された事案。被告人側は、同条の規定が憲法21条の表現の自由に反し違憲で…