A労働組合評議会(略称A労評)の機関紙「A労評」の編集発行の責任者であり、かつ名古屋市長選挙に立候補を決意したBの選挙運動者である被告人が、右Bを当選させる目的をもつて、「A労評」一九六五年三月一二日付九六〇号臨時大会特集号として、縦約三八・五センチメートル、横約二七センチメートルの紙面の第一面に、見出しとして、紙面の約三分の二を使用して、「名古屋市長にはB」と大書し、左肩に同人の写真を掲げ、左下に「A労評第一六回臨時大会は、来る四月二五日投票で行なわれる名古屋市長選挙の推せん候補者としてBを決定し、春闘と名古屋市長選挙の必勝のため、たたかい抜くことを決定しました」旨の記載をした文書合計約五四〇部を、右A労評書記局員Sらをして、傘下労働組合書記長Y外五名に対し、配布又は郵送させた場合には、右文書は特定候補者の当選を目的とした単なる宣伝文書であり、公職選挙法一四二条違反の罪が成立する。
候補者に関する宣伝文言を記載した労働組合機関紙の頒布が公職選挙法一四二条違反の罪にあたるとされた事例
公職選挙法142条,公職選挙法148条,公職選挙法243条3号,公職選挙法243条6号
判旨
特定候補者の当選を目的とした単なる宣伝文書を頒布する行為は、公職選挙法142条が禁止する文書図画の頒布に該当し、同条違反の罪が成立する。
問題の所在(論点)
特定候補者の当選を目的とした宣伝文書の頒布行為について、公職選挙法142条違反の成否が問題となる。
規範
公職選挙法142条1項(当時)が禁止する「選挙運動のために使用する」文書図画の頒布にあたるか否かは、当該文書が特定候補者の当選を目的とした宣伝的な性質を有するものであるかによって判断される。
重要事実
被告人が、特定の候補者の当選を図る目的をもって、当該候補者を宣伝する内容の文書を頒布した。弁護人は、これが憲法21条(表現の自由)に照らして許容されるべきである、あるいは公職選挙法上の禁止にあたらないと主張して上告した。
あてはめ
本件各文書の内容を検討すると、これらは特定候補者の当選を目的とした単なる宣伝文書であると認められる。このような文書の頒布は、公正な選挙を確保するために設けられた公職選挙法の規制に抵触するものであり、表現の自由の主張(憲法21条違反)についても実質的には単なる法令違反の主張にすぎず、原判決の判断は相当であるといえる。
結論
本件各文書は特定候補者の当選を目的とした宣伝文書であり、公職選挙法142条違反の罪が成立する。
実務上の射程
選挙運動の自由と公職選挙法による規制の限界が問われる場面で、文書の「当選目的」および「宣伝的性格」を基準に同法違反の成否を論ずる際の根拠として用いることができる。ただし、本決定は簡潔な上告棄却決定であるため、具体的な考慮要素の詳細は下級審判決や関連判例を参照する必要がある。
事件番号: 昭和46(あ)180 / 裁判年月日: 昭和47年10月6日 / 結論: 棄却
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