甲、乙両名のみが立候補していた県知事選挙において、乙候補者の選挙運動者である被告人らが領布した本件文書(甲候補者の推薦団体である県政刷新の会、日本社会党、日本共産党の連名のもとに、「県民の皆様いよいよ明日は我々の手で県庁の日の丸をおろし高々と赤旗を立てる日です、また一日も早く愛媛の教育を改め、中国(紅衛兵)のような青少年をつくりましよう 一月二六日投票の日 県民各位へ」と記載したもの。)は、甲候補者の当選を妨害しひいては乙候補者の当選をはかるための文書として、公職選挙法一四二条一項にいう選挙運動のために使用する文書にあたる。
公職選挙法一四二条一項の選挙運動のために使用する文書にあたるとされた事例
公職選挙法142条1項,公職選挙法243条
判旨
選挙運動のために使用する文書の頒布が公職選挙法142条1項に抵触するか否かは、当該文書の内容、頒布の態様等に照らして判断される。特定の候補者の当選に有利な影響を与える目的で配布された文書は、同条にいう「選挙運動のために使用する文書」に該当する。
問題の所在(論点)
被告人らが頒布した文書が、公職選挙法142条1項に規定される「選挙運動のために使用する文書」に該当するか。特に、法令違反や憲法31条違反の有無が争点となった。
規範
公職選挙法142条1項にいう「選挙運動のために使用する文書」とは、特定の選挙において、特定の候補者の当選を目的として、投票を勧誘し、または当選に有利な影響を与えるために直接または間接に使用される文書をいう。
重要事実
被告人らは、特定の選挙に関連して、特定の候補者の選挙運動に資する目的を持って、法定外の文書を不特定多数の人々に頒布した。この文書の内容は、候補者の政治的立場や実績を強調し、有権者の投票行動に影響を及ぼす性質を有するものであった。第一審および原審は、これらが選挙運動のために使用された文書であると認定した。
あてはめ
本件において、被告人らが頒布した文書は、その文言や形式からみて特定の選挙における特定の候補者の当選を促進する意図が客観的に認められる。このような文書を不特定多数に配布する行為は、選挙の公正を確保し、過熱した宣伝活動による弊害を防止するという公職選挙法の趣旨に照らせば、まさに同法が制限する「選挙運動のために使用する文書」の頒布にあたると評価できる。原判決の判断に事実誤認や法令違反は認められない。
結論
被告人らが頒布した本件文書は、公職選挙法142条1項にいう選挙運動のために使用する文書にあたり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
選挙運動の定義(目的意思と能動的働きかけ)が問題となる場面で、文書頒布の違法性を論じる際の準拠となる。特に「目的」の認定において、文書の客観的内容から推認する手法を確認した点に意義がある。
事件番号: 昭和43(あ)1705 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: 棄却
A労働組合評議会(略称A労評)の機関紙「A労評」の編集発行の責任者であり、かつ名古屋市長選挙に立候補を決意したBの選挙運動者である被告人が、右Bを当選させる目的をもつて、「A労評」一九六五年三月一二日付九六〇号臨時大会特集号として、縦約三八・五センチメートル、横約二七センチメートルの紙面の第一面に、見出しとして、紙面の…