判旨
公職選挙法142条による文書頒布の制限は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法15条1項および21条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法142条が規定する選挙運動のための文書頒布制限が、憲法15条1項(参政権)および21条(表現の自由)に違反し違憲ではないか。
規範
表現の自由(憲法21条1項)は絶対無制限ではなく、公共の福祉による合理的制限に服する。特に選挙の公正を確保し、有権者の自由な意思決定を妨げないための選挙運動の制限は、その目的が正当であり、制限が合理的かつ必要最小限の範囲内であれば、憲法に違反しない。
重要事実
上告人が、公職選挙法142条の規定に違反して文書を頒布したとして起訴された事案。弁護人は、同条による文書頒布の制限が、参政権を保障する憲法15条1項および表現の自由を保障する憲法21条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和39年11月18日判決)を引用し、公職選挙法による選挙運動の制限は選挙の自由と公正を確保するためのものであると判断した。本件における142条の文書頒布制限も、無制限な文書頒布による選挙の混乱や不当な影響を防止する趣旨に基づき、公共の福祉にかなう合理的な制限の範囲内にあるといえる。
結論
公職選挙法142条は憲法15条1項および21条に違反せず、合憲である。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限の合憲性を論じる際、目的の正当性と手段の合理性(必要最小限性)という枠組みで処理する際の重要判例となる。実務上は、個別具体的な規制態様の合理性を検討する際の前提知識として活用される。
事件番号: 昭和54(あ)664 / 裁判年月日: 昭和55年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法142条1項による文書頒布制限、同法243条3号の罰則、及び同法252条の選挙権・被選挙権の停止規定は、いずれも憲法15条、21条1項、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、選挙に際して公職選挙法142条1項が禁止する文書(通常葉書等以外の文書図画)を頒布したとして、同法24…