一 公選法一四二条一項、二四三条三号と憲法一五条、二一条 二 公選法二五二条と憲法三一条 三 公訴権濫用を理由とする公訴棄却を否定した原判断が、憲法三一条、三二条、三七条及び高裁判例に違反する旨の主張が不適法とされた事例
憲法15条,憲法21条1項,憲法31条,憲法32条,憲法37条
判旨
公職選挙法142条1項による文書頒布制限、同法243条3号の罰則、及び同法252条の選挙権・被選挙権の停止規定は、いずれも憲法15条、21条1項、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法142条1項による文書頒布制限および同法243条3号の罰則は、憲法21条1項・15条に違反し違憲か。 2. 同法252条による選挙権・被選挙権の停止規定は、憲法31条等に違反し違憲か。
規範
公職選挙法142条1項が、選挙の公正を確保するために文書図画の頒布を一定の態様に制限することは、憲法21条1項に違反しない(判例)。また、当該制限に違反した者に対し、同法243条3号による罰則を科すこと、及び同法252条により一定期間の選挙権・被選挙権を停止することも、公正な選挙制度の維持という公共の福祉に基づく合理的な制約であり、憲法15条、21条1項、31条に違反しない。
重要事実
被告人は、選挙に際して公職選挙法142条1項が禁止する文書(通常葉書等以外の文書図画)を頒布したとして、同法243条3号に基づき起訴された。これに対し、被告人側は、同法142条1項の文書頒布制限が表現の自由を保障する憲法21条1項に違反し、同法243条3号の罰則や同法252条の欠格条項も憲法15条、21条1項、31条に違反する無効な規定であると主張して上告した。
あてはめ
1. 公職選挙法142条1項の規定が憲法21条1項に違反しないことは、累次の大法廷判決により確立した判例である。本件においても、選挙の公正確保という目的は正当であり、その手段としての文書頒布制限も合理的範囲内にあると解されるため、同条項およびこれと表裏をなす罰則規定(243条3号)は合憲である。 2. 選挙犯罪により選挙権・被選挙権を一時的に停止する同法252条についても、判例の趣旨に照らし、憲法31条が要求する適正手続や実質的適正を欠くものではないと判断される。
結論
公職選挙法142条1項、243条3号、252条はいずれも合憲であり、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限が憲法21条1項に違反するか否かが問われる事案において、従来の合憲判決(戸別訪問禁止、文書頒布制限等)を維持・再確認する際の論拠として使用する。表現の自由の制約が「選挙の公正」という公共の福祉によって正当化されることを示す典型例である。
事件番号: 昭和30(あ)712 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法142条による文書頒布制限は、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らが、公職選挙法142条で禁止されている態様により、選挙運動のための文書を頒布したとして、同法243条3号に基づき処罰された事案。被告人側は、同条の規定が憲法21条の表現の自由に反し違憲で…