公職選挙法一四二条一項、二四三条三号の規定が憲法二一条、三一条に違反しないとされた事例
憲法21条,憲法31条,公選法142条1項,公選法243条3号
判旨
公職選挙法142条1項による選挙運動用文書の頒布制限及び同法243条3号の罰則規定は、表現の自由を保障する憲法21条に違反せず、また「選挙運動のために使用する文書」の意義も不明確とはいえない。
問題の所在(論点)
公職選挙法142条1項の文書頒布制限及び同法243条3号の罰則規定は、憲法21条の表現の自由を侵害するか。また、同条項にいう「選挙運動のために使用する文書」という文言は、憲法31条に照らして不明確であり無効ではないか。
規範
選挙の公正を確保し、過当な競争を防止するという公職選挙法の目的を達成するため、特定の方法による表現活動(文書頒布等)を制限することは、合理的かつ必要最小限度の制限として憲法21条に違反しない。また、処罰範囲を画定する構成要件の用語が、通常の法解釈によりその意味内容を確定し得るものである限り、憲法31条(適正手続・明確性の原則)に違反しない。
重要事実
被告人両名は、公職選挙法の規定に違反して、選挙運動のために使用する文書を頒布したとして、同法142条1項違反及び同法243条3号により起訴された。弁護人は、これらの規定が憲法21条(表現の自由)及び憲法31条(明確性の原則・罪刑法定主義)に違反すると主張して上告した。なお、本件の具体的な配布文書の内容や枚数等の詳細は、判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁は、公職選挙法142条1項が合憲であることは過去の累次の大法廷判決により確立した判例であると判示した。また、当該制限に罰則を付す同法243条3号についても同様に合憲であるとした。さらに、規制対象となる「選挙運動のために使用する文書」の意義については、先例(昭和35年判決等)に照らし、通常の解釈によって判断可能であり、国民に対して何が禁止されているかを十分に公示し得る不明確なものではないと評価した。
結論
公職選挙法142条1項及び243条3号は憲法21条、31条に違反しない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限の合憲性を検討する際、公職選挙法の形式的規制(文書頒布制限等)を維持する判例として引用する。憲法31条(明確性の原則)の文脈では、構成要件の言葉がある程度の抽象性を有していても、判例や法解釈によってその意義が確定可能であれば合憲とされる判断枠組みの一例となる。
事件番号: 昭和51(あ)281 / 裁判年月日: 昭和51年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法142条による文書頒布の制限は、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。選挙の公正を確保するための合理的かつ必要最小限度の制限として合憲であるとする先行判例を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法142条の規定に反して文書を頒布したとして起訴された事案。被告人側は…