事実審裁判所が犯情の差異により窃盗教唆犯である被告人を窃盗本犯より重く処罰したからといつて憲法第一四条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四三五号、同年一〇月六日大法廷判決、刑集二巻一一号一二七五頁・昭和二三年(れ)第七〇号同年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一七頁)の趣旨とするところである。
犯情による科刑の差異と憲法第一四条。
憲法14条
判旨
裁判所が、具体的な犯情の差異を考慮し、窃盗教唆犯を窃盗正犯よりも重く処罰することは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。刑法61条1項により教唆犯には正犯の刑を科すが、その具体的な量刑は裁判所の裁量に属する。
問題の所在(論点)
窃盗教唆犯に対し、窃盗正犯よりも重い刑を科すことは、憲法14条の「法の下の平等」に反し許されないのではないか。
規範
憲法14条の法の下の平等は、事案の性質に応じた合理的な差別を許容するものである。刑法61条1項により教唆犯に対しては正犯の刑を科すとされているが、具体的な量刑の決定においては、各被告人の犯情(犯罪の態様、動機、役割等)の差異に基づき、個別具体的な評価を行うことが認められる。
重要事実
被告人は窃盗の教唆犯として起訴された。事実審裁判所は、審理の結果として認められた具体的な犯情の差異を考慮し、教唆犯である被告人に対し、実際に窃盗を実行した本犯(正犯)よりも重い刑を科した。これに対し弁護人は、教唆犯を正犯より重く処罰することは憲法14条に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、事実審裁判所は犯情の差異を具体的に検討している。刑法上、教唆犯は正犯の刑を科すと規定されているが、これは法定刑の範囲を共有することを意味するにとどまり、個別の宣告刑において正犯と教唆犯の軽重が逆転することを一律に禁止するものではない。教唆者が犯罪の首謀者であるなど、実行犯よりも非難されるべき事情がある場合には、犯情の差異に基づく差別化は合理的理由があるといえる。したがって、被告人を正犯より重く処罰しても、憲法14条が禁ずる不当な差別には当たらない。
結論
事実審裁判所が犯情の差異により窃盗教唆犯を正犯より重く処罰することは、憲法14条に違反しない。
実務上の射程
共犯者の処断刑・宣告刑の均衡に関する議論で引用される。主犯格の教唆者が、従属的な実行犯よりも重く処罰されることが法理論的・憲法的に正当化されることを示す。
事件番号: 昭和26(あ)413 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審裁判所が、諸般の情状から導かれる犯情の差異を考慮して、被告人を他の者より重く処罰することは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴された際、原判決は記録および証拠に現れた諸般の情状を考慮し、有利な事情を勘酌してもなお犯情が軽くないと判断した…