略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することは相当ではないが、このために弁護人の弁護権が妨げられたと認めるべき証跡が全くない場合は所論訴訟法違反の主張は採用しがたい。
略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することの当否。
刑訴法256条,刑訴法405条,刑訴法411条,刑訴法462条,刑訴規則289条,刑訴規則293条
判旨
略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することは不相当であるが、弁護権を妨げた等の事情がない限り、直ちに訴訟手続の法令違反として破棄理由にはならない。
問題の所在(論点)
略式命令請求書に証拠(現認報告書)の内容を引用して記載することが、訴訟法上の違法、あるいは被告人・弁護人の弁護権を侵害する不適法な手続に該当するか。
規範
検察官が略式命令を請求するに際し、請求書の中に証拠の内容(司法警察職員作成の現認報告書等)を引用して記載することは、予断を抱かせるおそれがあり相当ではない。しかし、かかる記載がなされたとしても、直ちに被告人の防御権や弁護人の弁護権を不当に侵害するものでない限り、上告理由となる重大な訴訟手続の法令違反には当たらない。
重要事実
検察官が略式命令の請求を行うにあたり、その請求書の中に司法警察職員が作成した現認報告書の記載内容を引用した。これに対し弁護人は、かかる手法は違憲であり、訴訟法に違反するものであるとして上告した。
あてはめ
本件において、略式命令請求書に現認報告書の記載を引用したことは、手続として相当とはいえない。しかし、記録を精査しても、この記載によって弁護人の弁護権が具体的に妨げられたと認めるべき証跡は全く存在しない。したがって、適正な防御の機会が奪われたとはいえず、判決に影響を及ぼすべき重大な違反は認められない。
結論
略式命令請求書への証拠引用は不相当であるが、本件では弁護権の侵害が認められないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
起訴状一本主義の趣旨から、裁判官に予断を生じさせる記載は本来抑制されるべきであるが、略式手続においては書面審理が前提であるため、形式的な瑕疵のみで破棄されることは稀である。実務上は、具体的な弁護権の侵害(反証機会の喪失等)がない限り、本判例を根拠に手続の有効性が維持される傾向にある。
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