判旨
医師作成の診断書をその記載内容を証拠とする場合に証拠物として取り調べる手続は違法であるが、他の証拠により犯罪事実が認定可能であれば、判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
書面に記載された内容を証拠とする場合に、これを証拠物として取り調べる手続の適法性と、当該手続に違法がある場合の判決への影響。
規範
書面に記載された内容の真実性を証拠とする場合には、伝聞法則が適用されるべきであり、適切な証拠調べ手続(書証としての取調べ等)を経る必要がある。内容を証拠とするにもかかわらず、単なる証拠物として取り調べることは訴訟手続上違法である。もっとも、当該違法な証拠を除外しても、他の適法な証拠によって犯罪事実の認定が十分に可能であるならば、その手続上の違法は判決に影響を及ぼさない(刑訴法379条参照)。
重要事実
被告人が傷害の事実で起訴された事件において、第一審裁判所は、医師が作成した診断書を証拠として採用した。しかし、裁判所はその診断書の「記載内容」を事実認定の根拠としたにもかかわらず、手続上は「証拠物」として取り調べを行った。弁護人は、この手続が憲法37条2項や判例に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、医師作成の診断書はその記載内容が証拠とされている。したがって、これを証拠物としてのみ取り調べた第一審の訴訟手続は、伝聞法則や書証の取調べ手続の観点から違法といえる。しかし、本件記録を精査すると、当該診断書を証拠から除外したとしても、第一審判決が掲げる他の証拠(被害者の供述等、詳細は判決文からは不明)のみによって、判示の傷害事実は十分に認定できる。したがって、証拠調べ手続の違法は、結果として判決の結論を左右するものではない。
結論
証拠物として取り調べた手続は違法であるが、他の証拠により犯罪事実を優に認定できるため、判決に影響を及ぼす違法とはならず、上告を棄却する。
事件番号: 昭和46(あ)2370 / 裁判年月日: 昭和47年6月2日 / 結論: 棄却
本件「酒酔い鑑識カード」(判決別紙参照)のうち「化学判定」欄および被疑者の言語、動作、酒臭、外貌、態度等の外部的状態に関する記載のある欄の各記載は、いずれも刑訴法三二一条三項の「司法警察職員の検証の結果を記載した書面」にあたり、被疑者との問答の記載のある欄ならびに「事故事件の場合」の題下の「飲酒日時」および「飲酒動機」…
実務上の射程
書証を証拠物として取り調べる「証拠物たる書面」の限界を示す。内容の真実性が問題となる場合は伝聞例外の要件充足と書証としての取調べが必要だが、答案上は、手続違法があっても「他の証拠による認定可能性」があれば判決への影響を否定する論法として、刑訴法379条や411条等の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)1690 / 裁判年月日: 昭和40年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証人が体験した事実そのもの、または体験した事実に基づいて推測した事項に関する供述は、単なる意見の表明ではなく、証拠能力を有する。 第1 事案の概要:刑事被告事件において、被害者Aが証人として供述を行った。この供述について、弁護人は「証人の意見の表示にすぎない部分を証拠として採用した」として、判例違…
事件番号: 昭和47(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和48年6月5日 / 結論: 棄却
実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。
事件番号: 昭和46(あ)192 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、被告人が公判審理において証人に尋問し反対尋問する機会を保障するものであり、公判外の供述を証拠とすることを一律に禁止するものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事被告事件において有罪判決を受けた際、公判期日外における第三者の供述等(伝聞証拠)が証拠として採用されたことに対し…
事件番号: 昭和49(あ)58 / 裁判年月日: 昭和49年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の尿の採取手続きが違法であるとの主張に対し、記録上はそのような事実は認められないとして、強制採尿等に関する憲法違反の主張を排斥した。 第1 事案の概要:被告人の尿が採取され、その手続の違法性が争点となった事案である。被告人側は、当該尿採取が憲法31条(適正手続の保障)および37条1項(公平な…