実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。
実況見分調書における立会人の指示説明の証拠能力
刑訴法321条3項
判旨
実況見分調書に記載された被疑者の指示説明を、その内容に沿う事実認定の証拠としてではなく、実況見分の結果を理解するための前提として用いることは適法である。
問題の所在(論点)
実況見分調書に記載された被疑者の指示説明を、事実認定の証拠として用いることが許されるか。具体的には、実況見分の結果(状況)を証拠とする趣旨での引用が、指示説明内容の真実性を証明するための証拠利用に該当するか(伝聞法則の成否)。
規範
実況見分調書に記載された指示説明の内容を直接の証拠として用いることは伝聞法則(刑事訴訟法320条1項)に抵触し得るが、記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨において、その前提となる指示説明を引用することは許容される。
重要事実
被告人が捜査機関による実況見分に立ち会い、現場での指示説明を行った。その指示説明を含む実況見分調書が作成され、一審判決において証拠として引用された。弁護人は、これが憲法31条、32条に違反する伝聞証拠の不正な使用であるとして上告した。
事件番号: 昭和46(あ)192 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、被告人が公判審理において証人に尋問し反対尋問する機会を保障するものであり、公判外の供述を証拠とすることを一律に禁止するものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事被告事件において有罪判決を受けた際、公判期日外における第三者の供述等(伝聞証拠)が証拠として採用されたことに対し…
あてはめ
一審判決が実況見分調書を引用したのは、同調書に記載された「実況見分の結果」を証拠とする趣旨であることが明らかである。これは、被告人の指示説明そのものを内容通りの事実として認定するための証拠(伝聞証拠)として用いたものではない。したがって、実況見分のプロセスや結果を確定するための資料として取り扱う限り、憲法や刑事訴訟法に違反する証拠利用には当たらない。
結論
本件実況見分調書の引用は適法である。指示説明の内容を事実認定の直接の証拠としたわけではないため、伝聞法則違反を理由とする上告は認められない。
実務上の射程
本判決は、現場指示説明を含む実況見分調書の証拠能力に関する「非伝聞」的な構成(現場指示が実況見分の内容を特定するための不可欠な一部であるとする考え方)を補強するものとして機能する。答案上は、321条3項の要件を検討する際、指示説明が「動機」や「場所の特定」等の非伝聞的な目的で使用される場合の限界を示す素材として活用できる。
事件番号: 昭和40(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和41年2月17日 / 結論: 棄却
捜査機関が任意処分として検証(実況見分)を行うに当り、被疑者、目撃者その他の者(以下関係人という)を立合わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させるのは、実況見分の一つの手段であつて、関係人を取調べて、その供述を求めるのとは、その性質を異にし、また、右指示説明を実況見分調書に記載す…
事件番号: 昭和37(あ)1690 / 裁判年月日: 昭和40年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証人が体験した事実そのもの、または体験した事実に基づいて推測した事項に関する供述は、単なる意見の表明ではなく、証拠能力を有する。 第1 事案の概要:刑事被告事件において、被害者Aが証人として供述を行った。この供述について、弁護人は「証人の意見の表示にすぎない部分を証拠として採用した」として、判例違…
事件番号: 昭和46(あ)2370 / 裁判年月日: 昭和47年6月2日 / 結論: 棄却
本件「酒酔い鑑識カード」(判決別紙参照)のうち「化学判定」欄および被疑者の言語、動作、酒臭、外貌、態度等の外部的状態に関する記載のある欄の各記載は、いずれも刑訴法三二一条三項の「司法警察職員の検証の結果を記載した書面」にあたり、被疑者との問答の記載のある欄ならびに「事故事件の場合」の題下の「飲酒日時」および「飲酒動機」…