捜査機関が任意処分として検証(実況見分)を行うに当り、被疑者、目撃者その他の者(以下関係人という)を立合わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させるのは、実況見分の一つの手段であつて、関係人を取調べて、その供述を求めるのとは、その性質を異にし、また、右指示説明を実況見分調書に記載するのは、結局これに基づいてなした実況見分の結果を記載する手段にすぎないと解すべきである(昭和三六年(あ)第一四九号同年五月二六日第二小法廷判決、刑集一五巻五号八九三頁参照)。
実況見分調書における立会人の供述記載の性質。
刑訴法320条1項,刑訴法321条1項3号,刑訴法321条3項
判旨
捜査機関が任意処分としての実況見分に際し、関係人に指示説明を行わせることは実況見分の一手段であり、その内容を調書に記載することは、実況見分の結果を記載する手段にすぎない。
問題の所在(論点)
任意の実況見分における立会人の指示説明を記載した書面について、伝聞例外(刑訴法321条3項等)の適用を待たず、実況見分(検証)の結果として証拠能力を認めることができるか。
規範
実況見分に際し、立会人(被疑者、目撃者その他の関係人)に目的物等を任意に指示・説明させることは、実況見分の性質に属する一手段である。かかる指示説明の記載は、取調べとしての供述を求めるものとは性質を異にし、あくまでこれに基づいて行われた実況見分の結果(検証の結果)を記載する手段として許容される。
重要事実
捜査機関が、任意処分として本件実況見分を実施した際、関係人を立ち会わせ、実況見分の目的物や必要な状態について、それら関係人に任意の指示および説明を行わせた。さらに、その指示説明の内容を実況見分調書の中に記載し、原判決は当該調書を証拠として引用した。
あてはめ
本件における指示説明の記載は、単に関係人の供述内容そのものを事実認定の資料としたものではない。むしろ、捜査機関がどのような状況を確認したかという実況見分のプロセスおよび結果を記録する手段としてなされたものである。したがって、これは関係人の供述自体を証拠とするものではなく、実況見分の結果という非供述的な証拠資料としての性質を有する。
結論
指示説明を含む実況見分調書は、捜査機関による検証の結果を記載した書面として、適法に証拠とすることができる。
実務上の射程
実況見分調書中の「指示説明」が、現場における位置関係を特定するためのものであれば、伝聞法則の適用を受けない「現場指示」として、321条3項(または326条)の要件充足により証拠能力が認められる。ただし、指示説明の内容が単なる位置特定を超えて、犯行態様などの過去の犯罪事実に関する供述(現場供述)に及ぶ場合は、伝聞証拠として別途厳格な要件(321条1項各号等)が必要となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和35(あ)887 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
一 刑訴第三二一条第三項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する。 二 刑訴第三二一条第三項は憲法第三七条第二項前段に違反しない。
事件番号: 昭和47(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和48年6月5日 / 結論: 棄却
実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。